基板設計の段取り

基板設計の段取り

段取り

基板の製造工程はほとんどが自動化されているのは周知の通りです。さらに、パターンの高密度化により、検査工程も自動化が進んでいます。200um以下のパターンを人間の目視で完璧に良否を判定することは事実上不可能です。しかし、基板のパターン設計では、人智に頼る部分が多く残っています。自動設計のための優れたツールが登場していることも事実ですが、部品のライブラリ登録や、部品配置やアナログ回路の引き回しなどでは、全て機械に頼ることは現実的には不可能です。高速回路の引き回しなど、配線時に信号の波形をチェックするにも、まず、人がパターン配線をしなければ始まりません。今回より、基板の設計についての手順を簡単にお話してゆきたいと思います。できる限り初歩的な話を中心に進めてゆきたいと思いますが、まずは、設計の流れについてお話したいと思います。

一言で「設計」といっても、回路設計と配線設計は異なります。私たち基板の世界では、お客様から回路図をいただいたところから作業が始まります。回路設計用のシステムを総称して、CAE(Computer Aided Engineering)と呼びますが、ここから配線設計用のCAD(Computer Aided Design)データが出力されます。このデータに基づいて基板を設計・製造して実装作業に使います。実装作業後のテスタ用のデータも同様です。回路図(データ)から基板の製造にとりかかるまでの段取りを【図1】に記します。

通常、回路情報をいただくところから作業が始まりますが、手書きの回路図やネット情報が支給されない場合は、回路シンボルを作成してネットデータを作成するところから取り掛かる場合もあります。

段取り
さて、CADを使って設計することの一番のメリットは、データを一元的に管理することができて、データを随時チェックできることではないかと考えます。回路からパターンを設計して組み立てるまでの流れを【図2】に記しますが、この一連の流れをデータで管理することができるので、製品の品質を標準化して安定させることができ、後々までノウハウを残すことができるのです。CAEで作成した回路情報やシミュレーションデータを基にCADを使ってパターンを設計します。設計が完了すると基板製造や部品実装に使われるCAM(Computer Aided Manufacturing)データが出力されます。基板製造用のデータはガーバーデータとも呼ばれ、実装用データにはメタルマスクの製造データや、部品の座標データなどが網羅されています。また、基板の導通検査やインサーキットテスタ(ICT)に使われるデータをCAT(Computer Aided Test)データと呼びます。

コストダウンのツボ

従来は、回路図を支給していただいて基板を設計するのが通常のやり方でした。ただ、最近、回路設計の対応の可否についてお問い合わせをいただくケースが増えています。理由として、市場のニーズにより、回路データとパターン設計データのやりとりがスムーズにできるツールが登場して、距離が近づいたことが挙げられると思います。シミュレーションツールなどはその典型例といえるものです。回路図エディタとパターン設計用CADの双方を備えている設計会社もあります。

ただし、製品の回路図となればノウハウのかたまりですから、簡単に外部に委託できるものでもありません。一方、回路設計ツールとCADの境目が曖昧になっている現実もあります。

そこで、基板の用途や仕様によって、回路設計から外部に委託することを提案したいと思います。回路図の入力作業(ネットリストの作成)からパターン設計まで、本来はセットメーカー側で対応するべきですが、高価な設計ツールが必要になるなどのデメリットもあって、すべてのお客様にお勧めできるものではありません。

製品の回路図を外部に委託することは、ノウハウの流出を招き、自社への技術の蓄積を放棄することにほかなりません。しかし、一部の評価基板や治具基板程度であれば、アウトソースできるケースが多々あることも事実です。また、「フォワードアノテーション/バックアノテーション」「クロスプロービング」「ライブラリ管理ツール」など、CAD機能の充実も進んでいます。

基板の用途や仕様によっては、回路設計もアウトソースするほうが得策になる場合もあります。私たちは、お客様の手間を煩わせることなく、スムーズに製品を提供するお手伝いをいたします。