基板の賞味期限

基板の賞味期限

賞味期限なんて言葉を使うと、お客様の中には「?」と考える方もおられると思います。しかし、半導体が防湿されて送られてくるように基板も湿気にはとても敏感です。ちなみに、SRの工程が終了したばかりの基板などは悪条件下で1週間も放置すれば表面が劣化してしまいます。お客様に届けられる基板は防錆・防湿処理されてはいるものの、これも開封して放置すれば、いずれ表面が劣化して部品が実装できなくなります。今回は、基板の品質保持期限に関する話題で進めて行きたいと思います。

材料は条件次第で劣化の速度は変わりますが、具体的な保管条件としては、FR-4の場合で直射日光を避けた上で温度は20℃以下、湿度は50%以下が目安です。直射日光を受けると反りやねじれ・性能低下の原因となります。高温多湿の条件の下では、基板が吸湿してサビたり性能の低下を招きます。また、加工前に反りや歪みが起きないように、平らな場所で保管する必要があり、基板メーカーでは材料の保管条件や保管場所などにも気を遣っているのです。特に外形寸法が大きな基板などは立てかけていたりするとゆがんでしまいますのでご注意ください。

メーカーが保証する保管期限は、積層板が未開梱で1年程度、加工後のプリント配線板ではFR-4材プリフラックス処理品で未開梱品が2~3ヶ月、金メッキ・はんだレベラ品では未開梱でかつ保管条件が良好なら6ヶ月程度大丈夫だと思われます。開梱されたものを長期間保管する場合は、材料の保管条件を参考にして保管されると良いでしょう。なお、当然のことではありますが、基板を直に手で触れることは避けてください。触れた部分から劣化してしまいます。基本的には手袋を着用して触るかパターン面には触れずに端面を持つようにすれば大丈夫です。

それでは、基板は1年もすれば使い物にならなくなるかというとそうではありません。ここまでははんだ濡れ性を 考えてメーカーの保証期間のお話をしてきましたが、エポキシ樹脂の性能については、高温・高湿と物理的ストレスなどの劣化要因がなく、保管条件に問題がなければ5年程度前に製造された基板であっても表面の銅に問題がなければ使用可能です。

ビルドアップ基板やポリイミド樹脂系の材料は吸湿特性が相対的に高いため注意が必要です。特にビルドアップ基板は材料によって特性が大きく変わるため、予め取引先にご確認ください。ある工法のものは開梱後の保障期間が短いものもあるようです。

保管期間が長引いた場合は、ベーキング処理を施せば湿気を飛ばすことはできます。ただ、メーカーによっては別途費用を請求される場合もありますので極力早いうちに実装を完了されることをお勧めします。また、ゆがんだものや反ってしまったものは使えない場合もあるので注意が必要です。

 

コストダウンのツボ

海外メーカーとの競合で収益が悪化した国内のプリント配線板メーカーが小口受注を避けるようになった結果、お客様に小口品のまとめ発注を迫るケースが増えて、相対的に保管期間が長引く傾向が見受けられます。まとめて発注すれば購入価格は下がるものの、在庫管理に手間がかかることもあって悩ましいところではないでしょうか?表面処理にはんだレベラを選択すれば即解決ですが、鉛フリー実装を採用する場合は使えませんし、実装時の無洗浄化が完了していれば基板の表面処理はプリフラックス仕様になっており、基板の長期保存も難しくなります。

そこで、上記の問題を解決するために、小口品の基板の表面処理に「無電解金メッキ(フラッシュ金メッキ)」を採用してみてはいかがでしょうか?理由はいくつかありますが、防錆特性、対磨耗性、はんだぬれ性のどれを取ってみても良好で、鉛フリーはんだとの相性も共晶はんだに近いとの話もありました。発注先に確認が必要ですが、費用の面についてもそれほど大きなコストアップ要因にはならないと思われます。

つまり、大口(量産)品はプリフラックス、小口品で保管期間が長引きそうなものはフラッシュ金メッキを採用されてはいかがかと考えます。お客様の保管コストと購入費用などから一度ご検討されてはいかがでしょうか?