プリント基板理解度チェックシート 品質向上・コストダウンのために(設計者・発注者向け)


プリント基板理解度チェックシート
品質向上・コストダウンのために
(設計者・発注者向け)

著書:赤塚正志

定価:99円(Kindle版)
Kindle Unlimited なら0円

プリント基板購入にあたり、品質とコスト管理を実現するために必要な基本知識について、ご自身の理解度を把握していただくためのチェックシートです。
コストや品質、不具合等に関する様々な質問が含まれており、知識レベルの認識や改善すべき点について気付きを得て頂けると思います。

【主な内容】
1.費用対効果を上げる設計のために
2.品質の見極めとコストダウンのために
3.不具合の見極めと対処のために
4.品質と信頼性の評価のために
5.弱点克服のためのヒント

BGA実装について リペア作業

BGA実装について リペア作業について

前回は、マウンタを使った通常のリフロー実装を想定して話しを進めましたが、今回は、実装後の「リペア(リワーク)」について話をしたいと思います。最近では、デバイスメーカー側がQFPパッケージをサポートしていないケースもあると聞き及んでおり、否応なくBGAパッケージを選択しなければならなくなるケースもあるようです。

通常のリフロー工程の場合、端的に言えばBGA実装は難しくありません。マウンタの精度を考えてみればわかりますが、従来のQFPパッケージでも0.5mmピッチは当たり前でした。BGAパッケージでは一般的には1.0mmまたは1.27mmピッチのものが多く、QFPよりもセルフアライメント効果も働きやすいため位置ずれを起こしにくくなっています。実装作業後に不具合をチェックすることの重要性は当然のことながら、BGA実装に接する際にはじめにケアするべきことは、クリームはんだの印刷品質ではないかと考えます。メタルマスクの膜厚・メタルマスクの開口部の形状や開口率・はんだの粘度・印刷後の状態などは、必ずチェックする必要があるのではないかと考えます。半導体メーカーやBGAパッケージを多く使用するセットメーカー、さらに大手実装会社やEMSメーカーあたりは、クリームはんだの印刷品質をチェックするための評価基板を独自に開発しています。

しかし、通常のリフロー作業はうまくいってもリペア作業となると話は変わってきます。余談ながら、市場ではデバイスを外す「リワーク」という用語が使用されることが多いようですが、当社では外す作業では片手間ではないかと考えて「リペア」と言い習わすようにしています。

BGAは一般的にデバイスの単価が高く、例えば基板に不具合が発生した場合にデバイスを載せ替える必要性が生じる場合があります。本来は、基板の一部分だけを加熱する作業には品質上のリスクが多くあまりお奨めできないと筆者自身は認識していますが、現実には、特に試作品や小口品の実装品でリペア作業は必須になりつつあります。そこで、リペアを実施する際に特に重要ではないかと思ういくつかの注意事項を以下に列記します。

  1. 市場に流通する基板では極力実施を避けること
  2. 費用の問題から大口ロットでの実施は避けること
  3. リペア装置の性能を詳細にチェックすること
    判断材料:エリアヒーター/スポットヒーターの能力、温度プロファイルの作成機能、その他オプションなど
  4. リペア作業前に温度プロファイルをチェックすること
  5. 基板のランドの強度を落とさないよう、はんだボールは基板側に残すこと
  6. 基板側に残したはんだ残りを除去する際には、ランドを剥がさぬように注意すること

デバイスのデータシート上では複数回熱の負荷を与えることを制限する文章が記載されていることが多いようですが、BGA自体の耐熱性は案外良好で、経験則上では3~4回程度リフロー炉を通してもデバイスが破壊されることは少ないようです。
(*この文章はデバイスの耐熱特性について保証するものではありません)
デバイスへの熱の付加よりも問題になるのは基板へのダメージです。

リペア作業にとりかかる際、基板には既に諸々の部品が実装されており、すべての部品を一度取り外すことは現実には不可能です。実際のリペア作業ではBGAおよびこれに近接する部品のみを取り外すことになります。部品を取り外すにあたっては局部的に熱負荷がかかるわけで、基板にはあまり好ましいことではありません。BGAを取り外した後、再度基板に実装する場合にも「手はんだ実装」はできないためリワーク専用の機器や設備が必要になります。

BGAパッケージは、実装後にデバイスの四隅に反り返る応力がかかり、この部分で不具合が発生しやすくなります。最も起こりやすい不具合は、基板のランドが剥がれてします現象です。基板のパターンは千差万別である上、BGAパッケージを実装する基板はほとんどの場合が多層板です。多層板には電源層やグランド層を設ける必要があることから、この部分の銅箔はベタパターンになります。従って、基板自身が放熱効果を持ってしまい、リペア機の熱を逃がしてしまってはんだが融けず、基板のランドを剥がしてしまいます。この不具合を未然に防ぐためには、どの程度の温度であればはんだがしっかり融けるかを予めチェックする必要があります。

基板を安く買う(3) 番外編

基板を安く買う(3) 番外編~試作品のコストダウン

私自身の認識では、一般的なプリント配線板はドリルで穴をあけてめっき~露光~エッチングといった工程を経て、緑色のインクやシルク文字を印刷するものと考えておりましたが、この方法では、どうしてもイニシャル費用がかかってしまいます。プリント配線板メーカーを退職し、購入する側に回ってみるとこのイニシャル費用はどうにかならないかと考える立場がよくわかるようになりました。最近は特に一次試作品の基板にまで量産品と同等の品質を求めることの意味に疑問を持つようになり、イニシャル費の低減に取り組むなかで今回の加工方法を採用することにしました。

今回の工法は、一種のサブトラクティブ法ではありますが、エッチングによってパターンを形成するものではありません。従って薬品は使用しません。また大きな設備も必要としませんし、1台の加工機と銅張積層板のみで製作可能です。当方では初期試作(単なる動作確認や機能確認)であればレジストも不要であり、イニシャル費はデータ作成費用のみにすることができると考えました。実際に加工した基板の写真を掲載しますので参照してください。L/S=100μ/100μのような細線パターンを加工することは不可能ですが、ちょっとした機能試作用基板(製作数量10枚未満)であれば、イニシャル費をかけなくてもそこそこのプリント配線板はご提供することが可能になりました。ご興味がある方は、当社までお気軽にお問い合わせください。

【写真1】
【写真1】加工基板1
【写真2】
【写真2】加工基板2

金めっきに潜む 問題点

金めっきに潜む問題点

金めっきは、大きく分けて電解めっきと無電解めっき(化学めっき)に分類されます(当社HP「サルでもわかるプリント基板の話」参照)。めっきの工程は、まず表面を弱アルカリ性溶剤で脱脂したあと、下地のニッケルめっき(1~3μm程度)を付けて金メッキを施します。金の厚さは、電解めっきでは0.1μm程度、無電解めっきでは0.01~0.05μm程度の薄さになります。めっきの厚さは厚いほどよいというわけではなく、厚すぎると実装時に不具合を起こします。

電解めっきと無電解金めっきは用途によって使い分けられますが、電解めっきはボンディング用のパッドや接栓部によく使用されます。接栓はエッジコネクタ端子や単に金端子と呼ばれ、メス形のソケット(コネクタ)にかん合させて使われます。パソコンの増設メモリやICカード、以前には家庭用ゲーム機ソフトの挿入部分にも使用されていました。いっぽう、無電解めっきは防錆用途、または良好なはんだ濡れ性が求められる部分に使用されることが多いようです。最近では、鉛フリー実装の増加に伴って良好な濡れ性が期待できる無電解めっきがよく採用されるようです。

しかし、下地めっきのpH管理が不十分であると実装後の部品とプリント配線板の機械強度の低下(俗にいう「ブラックパッド」)を招くことから、金めっきが実装信頼性向上のための即効的対策とはなりにくいことがわかってきました。はんだの濡れ性に着目して金フラッシュめっきを推奨される例が多いようですが、最近、金フラッシュめっきを採用したプリント配線板で部品の接合強度が極端に弱くなる不具合が多く報告されています。ひどい場合は酸化した銅めっきの上から金めっきをした例や、ニッケル・金めっきのpH管理がずさんな場合もあるということでした。原料の価格高騰に伴い、最近は価格の面からも金めっきが使いづらくなっていることも事実です。

鉛フリーはんだを使った実装基板の部品の接合信頼性については、プリント配線板・部品・はんだの材料に加えて温度管理条件を最適化することである程度保たれることがわかってきました。

これらの事実から、個人的には、表面処理は原則的にプリフラックス処理を推奨し、長期保管が必要な一般的なプリント配線板については、鉛フリーレベラをお勧めしたいと思います。ただし、鉛フリーレベラは、組成はSn(錫)が主体です。ピッチの狭い部品(SMDコネクタやICなど)ではウィスカのリスクが潜在しますので採用に当たっては注意が必要です。基板の表面が清浄に保たれていることはもちろん、部品の端子の酸化やはんだの素材、さらに温度プロファイルにもご留意ください。

なお、これらの実装条件や不具合事例のご紹介については、弊社が定期的に開催する「鉛フリー実装セミナー」でご説明しています。