はんだボールと洗浄

はんだボールと洗浄

鉛フリーはんだ実装においてよく挙げられる問題点として、(1)引け巣 (2)ボイド (3)はんだボール あたりが感覚的にはベスト3になると思います。これらの不具合については、基本的には最適な実装条件を構築することで改善すると考えますが、抜本的な対策を立案するためには多くの手間やコストがかかります。特に3番目のはんだボールは、発生することは一切許容されない一方で、基板実装工程での無洗浄化の流れのなかで、実装に携わる多くの関係者の方々が頭を悩ませておられます。

お客様によっては、はんだボールを出荷検査部門でひとつひとつ除去しておられる例を聞き及ぶこともありました。

今回は、そうしたお客様のために開発された洗浄機をご紹介申し上げたいと思います。

【写真1】全体写真
【写真1】
【写真2】操作方法
【写真2】

【写真1】が機器の全体写真です。ノズルの先端に黒馬毛を素材に使用したブラシがあり、基板に大きな負荷をかけることなく洗浄することができるようになっています。
操作については、連続回転・反転回転・インターバル回転の3つのモードを簡単に切り替えることができ、回転数も一定範囲内で任意に設定することができます。【写真2】の通り、簡単操作で効率的かつ迅速に作業をすることができます。

付属のブラシは、φ5、φ8、φ12カップの3種類ですが、以下のオプションアクセサリーも用意しています。

<表1・オプションアクセサリー>
ロータリーヘッド H-034 コレクトチャック φ3.0専用タイプ
フレキシブルアウター FSO-01 フレキシブルシャフト交換用アウターチューブ
フレキシブルインナー FSI-01 フレキシブルシャフト交換用インナーシャフト
ブラシセット A 軸径 φ3.0 ブラシ径 φ5.0/8.0/12.0 の3本セット 馬毛
ブラシセット B 軸径 φ3.0 ブラシ径 φ5.0 の3本セット 馬毛
ブラシセット C 軸径 φ3.0 ブラシ径 φ8.0 の3本セット 馬毛
ブラシセット D 軸径 φ3.0 ブラシ径 φ12.0カップ型 の3本セット 馬毛

付属品以外のブラシ(サイズ・毛質等)については、別途ご相談を承ります。

詳細仕様は以下の通りです。

<表1・PBC-330 基本仕様>
型式 PBC-330 小型ハンディタイプブラシ洗浄機
駆動モータ DCモータ 24V
駆動シャフト フレキシブルシャフト FS-01 L = 約800㎜、240g
ロータリーヘッド コレットチャック φ3専用 H-034 L = 約30㎜、70g
ブラシ回転数 約 130 ~ 330 rpm
回転モード 左・右連続回転、OFF、左・右自動反転設定可能
自動反転インターバル 約 1~3 sec
ブラシ種類 軸径 φ3.0 ブラシ径 φ5.0/φ8.0/φ12.0カップ型 馬毛
推奨洗浄剤 基板洗浄用途 JE-29 1L/18L、一般洗浄用途 IPA
外形寸法・重量 207×104×155㎜ (L × W × H)  約2.7kg
電源 AC100V 50/60Hz 約 1A

推奨洗浄剤
基板洗浄の用途でご使用になる場合は、洗浄剤も用意しています。洗浄力・速乾性など
で優れた性能を持っており、1リットルでのご提供が可能ですので、お気軽にご用命ください。

*カタログ・デモ機のご用命は弊社までお気軽にどうぞ。

引け巣対策の 実験(3)

引け巣対策の実験(3)

前回のご報告から半年近くが経過してしまいました。ご報告に時間がかかってしまったことをお詫び申し上げます。引け巣の冷却については、過度の冷却によって基板の反りが発生して苦慮しておりました。実装基板の急冷については代償として反りが発生、一方冷却力を弱めると引け巣が発生し、この二律相反の解決に手間取っております。今回は、冷却の方法を考えて180mm×150mmの当社の評価基板での反りを抑えることに成功しました。【写真1】は、抵抗のリード部分です。かなりデンドライトが抑制されてきました。一方、冷却が難しいのが太いリード部品のフィレット部分です。【写真2】は、3.96mmピッチの電源用コネクタのフィレット部分です。引け巣は発生してはいませんが、デンドライトはしっかり(?)発生しています。

現状では、冷却力を補助するための方策を検討しております。品質の確保と費用の抑制を同時に達成できるような良い方策を発見するべく努力しており、次回以降のコラムでさらに状況をご報告しますのでお待ちください。

【写真1】(2.54mmピッチ)
【写真1】
【写真2】(3.95mmピッチ)
【写真2】

インターネプコン 出展報告

インターネプコン出展報告

さる1月16日(水)から3日間、東京ビックサイトで開催された「インターネプコンジャパン2008」にソルダーソリューション(株)と共同にて出展しました。ご来場いただいたお客様には御礼申し上げます。このコラムをご覧いただいておられる皆様から激励やご指導をいただき、厚く々々感謝いたします。また、セミナーの時間帯に通路をふさいでしまい、(株)新菱様、(株)レスカ様など周囲の展示各社様にご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。

当社とソルダーソリューションの共同ブース【写真1】では、通常実施している鉛フリー実装セミナーを三部構成で1日2回実施しました【写真2】。鉛フリー実装については実施済みのお客様がほとんどでしたが、実装不具合(凝固欠陥など)で悩んでおられる方々が多く、鉛フリーはんだを使いこなすことがいかに難しいか認識を新たにしました。これからも、できるだけ多くの会場で実施してゆきたいと思います。(お問い合わせはこちらから)

【写真1】
【写真1】
【写真2】
【写真2】

また、セミナー同様に注目された展示が、「チェッカースティック」です。現在でも、鉛やカドミウム、六価クロムを含む製品が流通しているようで、メディアも方々からの取材もいただき、ニーズの大きさを再認識しました。RoHS指令に対応しない部材の安く簡単な判定方法に対応する意味で有効とのコメントもいただきました。

はんだごてでは、産業機器用に新たに開発されたこて先を展示しました。【写真3】のようにこて先が太いことから、ハーネスの接合部分やパワーが求められる場合の使い勝手が向上しています。

【写真3】
【写真3】

一方、出展していたこともあって、あまり多くのブースをみることはできませんでしたが、BGAの接合部を目視することができるマイクロスコープには注目しています。【写真4】のようにボールを横から目視することができる機器は、BGAパッケージを採用する場合には必要になる場合が多くなると思われます。測長機能も装備されて価格も手頃です。

【写真4】
【写真4】

また、【写真5】のようなリペア機にも注目したいと思います。鉛フリーはんだでのリペア作業は、はんだをしっかり融かす必要があり、エリアヒーターは必須のアイテムになると思われます。基板全体を均一に加熱することができる出力の高いものがお奨めです。【写真6】のような狭い範囲の加熱に適した廉価版も展示してありました。

【写真5】
【写真5】
【写真6】
【写真6】

そのほかでは、実装関連の商品でマスキングフィルムが不要になる「ワンダーマスクP2」【写真7】やフラックスリムーバなど個人的に興味を持ちました。無洗浄化の進展に伴い、これらの商品の必要性も増してくるのではないかと感じています。

【写真7】
【写真7】

見学することができたブースは主に自社周辺に限られてしまい、盛況であったと評判な基板関連の展示をほとんど見られずじまいとなってしまって残念ではありましたが、当社としては成果が大きい、有意義な展示会でした。今後、さらにいろいろな詳しい情報を入手して皆様にお届けできれば幸いです。

引け巣対策の 実験(2)

引け巣対策の実験(2)

前回は、実装基板を急冷した際のプロファイルを掲載しましたが、このプロファイルで実装評価した基板の表面写真を撮影しました。全体的には大きな改善が見られたわけではありませんでしたが、何ヶ所かでは興味深い表面写真を得ることができました。

【写真1】
【写真1】-1
【写真1】-2
【写真2】
【写真2】-1
【写真2】-2

【写真1】と【写真2】を参照してみるとわかりますが、前者は実装後に急冷作業をしなかったもの、後者は実装後に冷却装置で急冷したものです。後者では、デンドライトがほとんど発生していないフィレットが数ヶ所ありました。この通り、はんだ付けの後に急冷することでデンドライトを抑制することができることは判明しましたが、はんだ付けの後にいかに早くはんだを冷やすかが問題になります。

デンドライトははんだが凝固する際に発生しますが、凝固する温度が220℃近辺であるので、凝固点まではんだの温度が低下する前に冷やすことができれば引け巣(デンドライト)の発生も抑制することができるのではないかと考えました。前回のプロファイルでは、ピークから20℃ほど温度が低下してから冷却していたため、次回はさらに早いタイミングで冷却する方法を検討することとしました。また、デンドライトが発生しているフィレットとそうでないフィレット内部について、それぞれ断面観察を実施した上で調べてゆきたいと思います。ほかに、評価基板の穴径の異なる部分のフィレットでもデンドライトの発生分布に違いが見受けられました。この部分についても今後の実験の中で検証してゆきたいと考えています。

引け巣対策の 実験(1)

引け巣対策の実験(1)

鉛フリー実装に移行する際に最初に突き当たる問題として、もっともよく耳に入るのが「引け巣」です。当社でも実装基板の評価試験を承ることが多いことから、「引け巣」(デンドライト)を抑制する方法について考えてみようと思い立ちました。引け巣対策として一番一般的なものが「急冷」であることはご周知の通りですが、200℃以上の温度をどうやって一気に下げるかについては、多くの実装会社の方々が知恵を絞っておられるようです。当社でも急冷装置を使って引け巣をどの程度抑制することができるかを実験してみることにしました。

当社で開発した実装評価用基板に積層セラミックコンデンサ・砲弾型LED・樹脂製コネクタ(通常タイプと電源用タイプ)などを写真の通り実装した上で、通常の冷却パターンと冷却装置を使用したパターンではんだフィレットが同様に変化するかを比較検査することにしました(写真1)。

【写真1】
【写真1】
(クリックすると拡大します)

引け巣ははんだが凝固する際にできる割れ目ですから、いかに早く冷却するかが勝負です。今回はさしあたり一気に冷やすことだけを主眼にして実験をしました。表1は実験時の基板表面温度の推移を熱電対で計測したものです。コピーなので判然としませんが、常温下での冷却では、ピークから180秒経っても表面温度は50℃以上ありますが、冷却装置を使用した場合には、ピークから30秒ほどで表面温度は実装前の水準に低下しました。
次回は、今回の結果として、フィレット部分の表面状況の写真でお知らせしたいと思います。実験したばかりでまだ撮影をしていませんので、この結果は次回までお待ちください。

【表1】
【表1】
(クリックすると拡大します)