金めっきに潜む 問題点

金めっきに潜む問題点

金めっきは、大きく分けて電解めっきと無電解めっき(化学めっき)に分類されます(当社HP「サルでもわかるプリント基板の話」参照)。めっきの工程は、まず表面を弱アルカリ性溶剤で脱脂したあと、下地のニッケルめっき(1~3μm程度)を付けて金メッキを施します。金の厚さは、電解めっきでは0.1μm程度、無電解めっきでは0.01~0.05μm程度の薄さになります。めっきの厚さは厚いほどよいというわけではなく、厚すぎると実装時に不具合を起こします。

電解めっきと無電解金めっきは用途によって使い分けられますが、電解めっきはボンディング用のパッドや接栓部によく使用されます。接栓はエッジコネクタ端子や単に金端子と呼ばれ、メス形のソケット(コネクタ)にかん合させて使われます。パソコンの増設メモリやICカード、以前には家庭用ゲーム機ソフトの挿入部分にも使用されていました。いっぽう、無電解めっきは防錆用途、または良好なはんだ濡れ性が求められる部分に使用されることが多いようです。最近では、鉛フリー実装の増加に伴って良好な濡れ性が期待できる無電解めっきがよく採用されるようです。

しかし、下地めっきのpH管理が不十分であると実装後の部品とプリント配線板の機械強度の低下(俗にいう「ブラックパッド」)を招くことから、金めっきが実装信頼性向上のための即効的対策とはなりにくいことがわかってきました。はんだの濡れ性に着目して金フラッシュめっきを推奨される例が多いようですが、最近、金フラッシュめっきを採用したプリント配線板で部品の接合強度が極端に弱くなる不具合が多く報告されています。ひどい場合は酸化した銅めっきの上から金めっきをした例や、ニッケル・金めっきのpH管理がずさんな場合もあるということでした。原料の価格高騰に伴い、最近は価格の面からも金めっきが使いづらくなっていることも事実です。

鉛フリーはんだを使った実装基板の部品の接合信頼性については、プリント配線板・部品・はんだの材料に加えて温度管理条件を最適化することである程度保たれることがわかってきました。

これらの事実から、個人的には、表面処理は原則的にプリフラックス処理を推奨し、長期保管が必要な一般的なプリント配線板については、鉛フリーレベラをお勧めしたいと思います。ただし、鉛フリーレベラは、組成はSn(錫)が主体です。ピッチの狭い部品(SMDコネクタやICなど)ではウィスカのリスクが潜在しますので採用に当たっては注意が必要です。基板の表面が清浄に保たれていることはもちろん、部品の端子の酸化やはんだの素材、さらに温度プロファイルにもご留意ください。

なお、これらの実装条件や不具合事例のご紹介については、弊社が定期的に開催する「鉛フリー実装セミナー」でご説明しています。