規格のはなし

規格のはなし

ものごとには「決まりごと」が必要です。車を運転するときは道路標識があり、交通法規は秩序の人命を守るために作られた決まりごとです。基板を作る場合にもこのような「決まりごと」があります。

<表1・世界各国の規格>
規格の名称 管理機関 制定国 略号
日本工業規格 経済産業省 日本 JIS
電気用品取締技術基準 経済産業省 日本 (電取法)
JPCA規格 (社)日本電子回路工業会 日本 JPCA
Military Specifications and           Standards     (アメリカ軍用規格) Depertment of Defense アメリカ MIL
アメリカ材料試験協会規格 American Society for Testing and                   Materials アメリカ ASTM
アメリカ規格協会規格 American National Standards                 Institute, Inc. アメリカ ANSI
アメリカ電気工業会規格 NNational Electric Manufacturers                 Associations アメリカ NEMA
UL規格 Underwriters Laboratories Inc. アメリカ UL
IPC規格 Institute for Interconnecting and     Packaging Electronics Circuits アメリカ IPC
イギリス標準規格 British Standards Institute イギリス BS
ドイツ規格 Deutsches Institüt für Normung            (Deutsche Normen) ドイツ DIN
オーストラリア標準協会規格 Standards Association of Australia オーストラリア GI
国際電気標準会議規格 International Electrotechnical Commission IEC

【表1】に世界各国の規格を記載します。わが国では、「JIS規格」がその代表です。基板の用語、信頼性評価の方法および条件、さらに評価用パターンの詳細にいたるまで、紙系・ガラス系など材料によって細かく規定されています。最近注目されている、鉛フリー実装に関する試験方法なども追加されました。日本版RoHS指令ともいえるJ-MOSSもJISで規格化されたものです。基板メーカー各社の標準仕様のほとんどが、JIS規格に準じて策定されています。ただし、ポリイミド・テフロン(フッ素)・金属系基材では該当規格がありません。次に、海外で使われる場合には、アメリカの「MIL規格」などが仕様決定のよりどころになります。ULへの試験サンプルの提出・評価を経て、その特性がUL規格に合致している場合、基板メーカーはどのような申請・評価内容であるかを示すULマーキングを基板上に刻印やシルク印刷で表記することができます。「ULマーキング」は各基板メーカー、各基板タイプに対して固有であるので、そのマークを見れば、どこの会社で製造されて、いかなるUL評価試験を受けたものであるかわかります。基板を購入されるお客様は、ULの認証を受けた基板を用いたセットが、特に米国内に出荷、使用される際には、セット全体のUL認証を取得する一助になるため、ご発注の際にUL認定の取得の有無を一つの判断材料にされることが多いようです。

また、「ANSI・NEMA」の規格には以前のコラムでも触れたように、基板材料のグレードが規定されています。JIS規格でも同様の分類体系がありますが、基板の業界では、ほとんどがANSI・NEMA規格の呼称を使っているようです。

さらに、上記の基板の信頼性に関する規格のほかに、最近「基板の鉛フリー化」や「グリーン調達」の動きが活発になってきました。RoHS指令はEUが提唱、推進してきましたが、有害物質の管理方法の標準化については、日本の大手電機メーカー数社が中心となってIECに提唱する動きがあるようです。(2006.02.21 日本経済新聞)

基板の製造にあたっては、これらの規格に従って、層構成・板厚、パターンや間隙、穴径・ランド径、配線の制約が決定されて仕様が決まります。

コストダウンのツボ

規格というのは、「ものづくり」のバイブルのようなものです。従って、基板を製造、購入する際には、これがしっかり守られているかが重要になります。

わが国は、電気製品に限らず高い品質を強みとして産業を発展させてきました。しかし、規格以上の高い次元での品質管理は、場合によっては「オーバースペック」(過剰品質))となってしまうこともあります。製造コストの増大など、最終的な製品価格にも大きな影響を及ぼします。

一方、安さばかりを追求しては品質の低下を招き、結果として不良率の増加など管理工数の増大からかえってコスト増になってしまうケースも見受けられます。

私たちは、基板の開発に必要なことは、基板だけではなく、部品のことや実装などの総合的な知識ではないかと考えます。例えば、簡単な評価基板のパターンはオートルーター(CADの自動配線機能)を使ったパターン設計の方が、対話型のCADより安いコストで設計できます。基板のランド形状は、フローとリフロー、または自動実装と手実装で変わります。各種の規格は、開発の際の道しるべとして使うことはできますが、それが全てではありません。規格の内容を熟知し、それをどのように自社内で標準化してゆくかが、最も重要なことと考えます。

そのために、お客様には個別基板別の図面の作成をお願いしています。図面には一般的な規格で網羅されない項目を記載することで責任の所在が明確になります。来歴の管理も容易になり、手配や製造の際に見解の相違などに起因する不具合を防止する効果もあります。図面の記載事項は、回路図と部品表は別にして、基板の外形(公差)・板厚(公差)・基材・層構成・配線仕様・表面処理・シルク印刷などを記載して、標準仕様と図面の記載内容がオーバーラップした場合、いずれを優先するかを明記してください。