基板を安く買う(1) 設計編

基板を安く買う(1) 設計編

部品を配置してパターンを作り、プリント配線板の製造用データを作成する。当たり前のことですが、CADが登場するまで、私たちの先輩方はこれを手作業でこなしてきました。私自身がプリント配線板業界に初めてお世話になったときには、まだ「手張り」のアートワーク設計が主力でした。

CADの登場により、設計の負荷は以前に比べて格段に少なくなり、部品のデータを予め登録してくれたり、誤った作業を即座に表示してくれたり、実装時の注意事項を情報として記憶してくれたり、などCADと上手に付き合うことで計り知れないメリットが生まれるのです。

回路情報をネットリストとして出力するほかにも、部品表の管理や出来上がったデータの管理など、ものづくりのノウハウを後に伝えてゆくためのツールとしての役割は決して小さくありません。是非上手にCADを使っていただくことをお勧めします。データの標準化を進めることで品質の標準化や安定化を図り、開発コストや基板単価の低減に結びつけることが可能になります。今回は、プリント配線板を安く買うためのノウハウについて個人的な知識からいくつかご紹介しようと思います。今回はパターン設計の観点からコストダウンの方法を考えてみたいと思います。

プリント配線板のパターン設計費は、原則的には時間工数によって計算することが多く、端的に言えば工数に時間単価をかけて費用を計算します。新規設計の場合は部品の「ピン数」に単価を乗じて費用を産出する方法もありますが、これもピンあたりに費やす時間単価が元になって計算されているようなものなのです。そこで、この工数をいかに短縮化するかが重要になります。このコラムの『基板設計の段取り』の【図1】の手順で設計作業が進みますが、個別の工数を削減することが基板設計費用を低減する近道ではないかと考えます。このため必要なコンセプトは「データの標準化」です。具体的な事例で説明してゆくと、回路図シンボルからネットリスト部品表ライブラリ)、プリント配線板の仕様、配線データへと一連でリンクするようなデータを構築してゆくことで、ネットリスト部品表の作成工数を低減し、配線作業のスムーズな展開へと結びつけることが可能になります。鉛フリー実装の導入に際しても標準化は重要なキーワードです。

具体的には、

  1. 部品ライブラリを統一する。
  2. 部品表を標準化して実装工程でも使用できるようカスタマイズする。
  3. 部品のクロスリファレンス(メーカー毎の比較一覧)を作成する。
  4. ネットリストとパターンデータのやり取りをできるようにする。
  5. 実装情報を予め読み込む。
  6. 部品配置が決定したら実装担当者から、実装作業における問題点をヒアリングする。

など対応を整備しておけば、以降の作業が楽になります。(ただし、すべて完璧に対応すると費用がかさみますので、オーバースペックにならないような検証作業が必要です。)

今まで述べてきたような機能をCADで完璧に網羅しようとすると設備のスペックも高度なものになります。CADの指定がある場合を除いては、CADの性能もよく吟味しないとCAD自体がオーバースペックになってしまい、設計費用に占める固定費が割高になってしまいます。従って、CADを選定する際には、自社の要求スペックと設備の性能をよく比較することが必要になります。本来であれば、回路図エディターとパターン設計CAD双方のデータのやり取りができれば完璧ですが、高いCADを購入しなくてもデータの標準化は可能です。要するに使う側の工夫によってCADのコストパフォーマンスは無限に拡がってゆくのです。

最後に、設計ご担当の方と実装ご担当の方の綿密な意見交換が必要になることはいうまでもありません。