基板の製造工程 (1)ドリル

基板の製造工程 (1)ドリル

前回は基板製造の流れは簡単にご説明しましたが、今回からは外層加工の工程について少し詳しく説明します。
まず始めに、「ドリル(穴加工)」についてお話したいと思います。

内層回路を形成した状態の基板は「シールド板」と呼ばれます。よくノイズ対策のために使う遮蔽板もそう呼ばれますが、こちらは内層回路が外からは見えないのでそう呼ばれます。

外層の工程はこれに穴をあけるところからスタートします。外形加工の工程でもNCや金型を使って穴加工が可能ですが、スルホールになる穴はこの工程で加工されます。加工するドリルの太さや形状は様々で、筐体への取付穴や楕円形の穴、部品挿入用の穴に経由穴(V/H、バイアホール)など、ドリル径でφ10mm超からφ0.5mm前後まで多くの種類があります。加工される基板の厚さも、薄いもので 0.2mm、厚いもので2.4mmやそれ以上とバリエーション豊富な上、位置の精度が厳しく、多くの基板は0.2mm(200μm)ずれると不良になってしまいます。高密度品では数10μmレベルの精度が求められるほどです。一方、最近では高密度実装やインピーダンスコントロールの都合からより小さい穴加工用に新たな材料や形状のものも開発されています。

ところで、ここで基板の穴径と板の厚さの相関についてお話しておきたいと思います。なぜかと言いますと、穴径はドリル径に左右されるからです。更にその理由は、メッキの工程に関係があります。つまり、板の厚さに比べて穴径が小さいと穴の奥までメッキ液が届かないからなのです。そのため、穴径を小さくしたり板厚を厚くする場合には注意が必要です。

穴径/板厚の数字を「アスペクト比」と言いますが、アスペクト比の許容数値はメーカーによって異なりますので、予め営業担当者に確認すると良いでしょう。ちなみに、業界では5.5~8程度が標準です。具体的には、板厚1.6mmであればφ0.3mmの穴であれば大丈夫ですが、これ以下の穴径を採用されるときには念のため確認しておくことをお勧めします。

ドリル加工では基板を何枚か重ねて加工しますが、ドリルビットの径が細くなるほど折れやすくなるため、穴径が小さくなると重ね枚数は減ることになります。

なお、穴の仕上径がφ0.2mmを下回るとドリルでは穴加工ができなくなるため、最近ではレーザービームによる穴加工も増えてきました。この穴は主に非貫通のスルホールに使われますが、詳細についてはビルドアップ基板の説明で触れることにします。

コストダウンのツボ

プリント基板の加工費ではこの工程が一番大きな割合を占めると言われています。本来、作る側の論理では原価に管理費と利益を上乗せして販売したいところですが、プリント基板は単位面積あたりの価格を基本に単価が決められてきたため、残念ながら上記の論理がほとんど通用しなくなってしまいました。そのため、プリント基板という商品は非常に利益率が低い商品になっています。

ただ、お客様の立場では少しでも購入価格を下げる必要があるのも当然です。そこで、今回は穴数・穴径と価格についてお話します。

基板の設計納期が短い場合などは、基板の投入を急ぐ余り穴の数やバリエーションまで目が届かなくなりがちです。

最近では小径スルホールを使っても量産コストを据え置くメーカーが多いようですが、数年前までは、φ0.3mm仕上りの穴があると割増料金を請求するメーカーもありました。1穴ずつ加工するため余りに穴数が多いと実際の加工費が高くつくため、後々のコストダウンが難しくなります。また、小径スルホールを使うとドリルの強度が落ち寿命も短くなって、投入の段階での基板の重ね枚数が少なくなり、これも価格低減が難しくなる要因になります。設計者の方々の苦労を考えると酷なようではありますが、穴の径は極力大きくして頂きたいと思います。ちなみに、メーカーによるばらつきはあるものの、ドリル径がφ0.6mm以上であれば重ね枚数がアップする場合が多いようです。