基板の製造工程(5) (ソルダレジスト)
エッチング工程が完了してパターンが形成されました。このまま銅を露出させたまま使う場合もありますが、はんだ漕やリフロー炉を通しても部品はうまく実装できません。また放置すれば銅の表面が酸化してしまいます。そこで、必要な部分の銅だけを露出させるために表面をコートします。これがソルダレジスト(以下SRとします)です。
SRの役割は以下の通りです。
- 部品実装時のはんだブリッジの防止
- 部品・コネクタなどとの接合部分以外へのはんだ付着の防止
- 防錆
- 回路間の絶縁信頼性の維持
- 外部衝撃からの保護
そのため、SRに求められる品質は、
- 基板との密着性
- 耐熱性
- 耐湿性
- 耐溶剤性
- 耐CAF性(耐マイグレーション性)
などがあります。ちなみに、5のマイグレーションという現象は「電蝕」ともいい、イオン化した銅が基板のガラス繊維に沿って成長して、最終的に近隣のパターンの銅と接触してショートを起こすことを言います。SRは、表面に沿って成長するマイグレーションを抑制する働きがあるといわれています。
ところで、基板を見ると緑色のものが多いことに気づくと思いますが、この緑色がSRの色です。SRは緑色のみかというと規格があるわけではなく、薄い緑色から青・赤・白・黒などのバリエーションがあります。海外製の基板にはまさにいろいろな色が使われていますが、日本では緑系統の色のほかに環境への影響を抑える材料を使った青、LEDモジュールなどによく使われる白、ほかに黒などがあります。
この工程のプロセスについては、「露光」の工程と同じように、印刷法と写真法に分類されます。印刷法は紫外線で硬化するインクをスクリーン印刷したあと紫外線を照射するものです。一方、写真法はインクを全面に塗布したあと感光させ、感光しなかった部分(不要な部分)を洗い流す方法です。
印刷法はインクをスクリーン印刷して紫外線を照射するので写真法と比較して工程が簡単で、一貫ラインの構築も容易であるため量産製品の製造には適していますが、フィルムを合わせる写真法よりずれが大きくなる傾向があり、銅箔との狭いクリアランスを求められる仕様のものには不向きです。
クリアランスは、印刷法の場合は銅箔に対して300~400μm広げないと銅箔にインクがかぶる恐れがありますが、写真法の場合では100μmが一般的な数値です。
また、スクリーン塗布の方法では、インクがスルホールにつまってしまうこともあります。そのため、スルホールが埋まらないインクの塗布方法があります。一つ目はカーテン状の幕と通してインクを塗布する「カーテンコート」、二つ目はスプレーでインクを塗布する「スプレーコート」と呼ばれる方法です。どちらもスクリーン塗布の方法より基板表面に均一にインクをつけることができます。ただ、どのメーカーでも採用している訳ではないのでお取引するメーカーへ予め確認してください。
コストダウンのツボ
最近、部品の高密度化が進み、ランドのピッチはますます狭くなってきました。QFPやBGAのランドピッチは0.5mm(500μm)が当たり前になっています。そのため、ランド同士の間隙は、200~300μm程度しかとれず、ランド間にSRインクを入れようとするとどうしてもパターンと銅箔のクリアランスが問題になります。
- QFPランドの幅
- SRが残るスペース
- QFPランドとSRとのクリアランス
- QFPランドのピッチ
お客様の希望は大別すると以下の要因に集約されると思います。
- 部品との接合信頼性確保のため、Aを広くしたい
- 実装時のはんだブリッジ防止のためBを広くしたい
- A、Bのスペースを稼ぐためCを狭くしたい
Cの数値については狭いメーカーで35μm、一般的には50μm程度で、A、Bの寸法を稼ぐためにCを35μmで設計すると、メーカーの選択範囲が狭くなってしまいます。
一方、Bの数値は、最低110~130μm程度が必要です。以上より、一般的なメーカーの保証値は以下の通りとなります
- 270μm
- 130μm
- C:50μm
ここでひとつ考えて頂きたいことがあります。上記の数値はあくまで「保証値」です。「実力値」ではありません。皆さんは、SRのランドかぶりについて許容数値がありますでしょうか?もし、SRかぶりを認めていただけないようでしたら、是非変更していただくことをお勧めします。A、Bどちらの寸法も大きくすることができるからです。
基本的にUL規格の認定を取得しているメーカーであれば、実力値では、50μm以下でも設計できるケースは多いと思われます。しかも、特に価格が上がるわけではありません。むしろ、実装しやすくなるため歩留まりが向上する可能性もあります。
私たちは、基板だけでなく設計や実装でのコストも考えてご提案することができる会社です。具体的な数値についてもFace to Faceでお客様の要望を最大限製品に反映させることができると考えています。
今回の記述については、一般的な写真法によるSR形成を前提に進めてまいりました。
紫外線硬化タイプのSRインクではこの仕様では設計できませんのでご承知おき願います。