基板とBGA

基板とBGA

BGAはICパッケージのひとつに過ぎません。ところが、これを採用するために多くの方々が苦労されていることも現実です。鉛フリーはんだの採用が拡がる中で品質の確保も並行する必要もあります。前回は「目からウロコ・・・」の中でBGA実装にあたって目視検査の重要性を述べましたが、今回はそれ以前の基板を中心としたお話です。

私が基板メーカーに在籍していた頃、初めてBGAパッケージを採用する際に、基板とデバイスの接合部が「見えない」ことが大問題になるお客様が多々ありました。当たり前のことですが、BGAは実装された後にはんだの接合部分を目視で検査することができません。日本のものづくりの原点は製品の品質の高さであり、「見えないもの」の品質の確保をどうするかは重大な問題です。そのため、何とかQFPパッケージの採用でしのぐような努力が多くの局面で試されていました。

BGAは海外で開発されましたが、日本では前述の趣旨からQFPの端子ピッチの狭小化が主に推進されてきました。QFPの現在の市場での主流は0.5mmピッチですが、0.4mm/0.3mmピッチのものも一部では使用されており、「見える」ことがいかに我が国で真剣に検討されたかがわかります。しかし、0.5mm未満のピッチのパッケージは基板のパッドと間隙が狭く製造が難しいこと(通常のエッチング公差では歩留まりが低い)、高度な実装技術が必要であること、また高速信号の処理能力でBGAに劣ることなどの理由から、極小ピッチのQFPパッケージは市場での主流にはなりませんでした。

一方、BGAは1.27mmをはじめとして、1.0/0.8/0.5mmなど、QFPより広いピッチを採用しており、通常の実装ではセルフアライメント効果も手伝ってGFPより実装不具合は比較的少ないようです。しかし、ボイドやマイクロクラックなど、不具合が発生した場合の原因の特定が難しことや、実装段階での温度管理の条件出しが容易でないこと、さらに接合部分が見えずにリペア作業が難しいこともあって採用に踏み切れないお客様も多いようです。

設計にあたっては、1.27mmピッチの場合、一般的なランド径はφ0.65にすると、隣接するランドとの間に2本のパターンを引くことができます。(図1)
一方1.0mmピッチの場合はランド径をφ0.6とすると1本のパターンを引くことができます。(図2)(現実には仕上がり値は若干小さくなります)

1.27mmピッチ設計

1.0mmピッチ設計

ただ、ランドからはパターンを引き出す必要があります。そのため、対角線上にViaを設定する必要がありますので、内側のランドからは簡単にパターンを引き出すことができなくなります。ランドのピッチが狭くなれば一層パターンの引き出しが難しくなりますので、BGAパッケージの選定には注意が必要です。

コストダウンのツボ

BGAを採用すると、「配線が引けない」という問題にぶつかるケースが少なくありません。その際、IVH(Interstitial Via Hole)やBVH(Blind Via Hole)といった非貫通スルホールを採用せざるを得なくなりますが、こうなる前に、「可能であれば」検討していただきたいことがあります。

  1. デバイスはできるだけピッチ1.0mm以上のものを選定する
  2. デバイスの内側のランドから引き出す信号線の数を極力減らす
  3. デバイス実装面の反対面への実装は避ける
  4. パターン設計にかける時間をできるだけ長く確保する

非貫通のスルホールを使うと、ビルドアップ基板を採用せざるを得なくなる恐れがあります。ビルドアップ基板は配線の高密度化が容易ですが、サイズを変えないと基板の単価が高くなってしまいます。パターンの密度は一般的にBGAの部分が高くなりますから、この部分の配線をうまく引き出すことができれば、非貫通のスルホールを使う必要がなくなります。そのため、あまりピッチの狭いものは選定しないほうが無難です。Viaを使ってパターンを引き出すことができればCOH(Chip on Hole)の採用を回避することもできます。

また、奥のランドになるほどパターンの引き出しが難しくなります。従って、デバイスの設計にあたっても端子のピン配置には留意していただくことをお奨めします。回路設計部門と基板設計部門との相互協力が一層重要になります。

三番目は、実装後の問題です。実装後に接合部分の検査や解析が必要になるケースがありますが、X線検査装置を使用することになった場合、裏面のデバイスの影が画像に写り込んで実装部分の確認がしずらくなります。

四番目は、最も重要なことではないかと考えますが、これは、非貫通スルホールを回避するための検討時間です。開発時間を短期間で抑えることはセットメーカー各社の至上命題ですが、同時に基板の仕様をいかにダウンサイジングするかということも
あわせて考える必要もあるからです。ピッチが1.0mm以上あるFPGA(Field Programmable Gate Array)PLD(Programmable Logic Device)を採用される場合には特にじっくり検討した上で基板の仕様を決定していただくことをお奨めしたいと思います。