フレキシブルプリント配線板とリジットプリント配線板の相違(6)~銅箔 

フレキシブルプリント配線板と
リジットプリント配線板(FR-4/CEM-3など)の相違点を説明している。
今回は、材料の「銅箔」の相違点に触れる。
リジットプリント配線板は
電解銅箔
を利用する。
電解銅箔は、硫酸銅溶液中にカソード電極を沈めて通電し、
カソードに析出した銅箔を指す。
カソード面に接する部分は光沢をもつことから「シャイニー面」と称されることもある。
裏側には光沢はなく、「マッド面」称される。
量産が容易で低価格での供給が可能だ。

一方、フレキシブルプリント配線板材料の場合、
電解銅箔よりも
圧延銅箔が採用される場合が多い。
圧延銅箔とはインゴットを圧延したもので、
最大の特長は材料に可撓性(かとうせい)があるところにある。

電解銅箔に可撓性はなく、

屈曲条件下で機械的強度を保つことはできない。
ヒンジ部分に採用されることが多いフレキシブルプリント配線板は、
軽薄短小のニーズに合致することにとどまらず、
スマートフォン・タブレットPCの市場の伸長とともに
市場でのステイタスを築いた。
さらに、圧延銅箔の製造技術は、海外企業に容易には移転させることができない。
従って、加工費が安価な海外で製造しても
フレキシブルプリント配線板の材料は日本の国産品優位に立つ。

つまり、リジットプリント配線板のように
技術の流出が発生しにくい。
プリント配線板の業界では、
仕様の標準化の進展に伴い、
技術の海外流出
価格競争の激化
が業界各社の体力を奪い
業界の収縮を招いた。
フレキシブルプリント配線板では、
市場を守る力が働くことを祈念する。

 

フレキシブルプリント配線板とリジットプリント配線板の相違(5)~板厚

フレキシブルプリント配線板の最大の特長は、板厚にあると認識している。
フレキシブルプリント配線板と
リジットプリント配線板(FR-4/CEM-3など)の相違点として再三述べたが、
リジット(硬質)プリント配線板の場合は定尺で供給される一方、
フレキシブルプリント配線板の材料はロール形式で供給される。

また、積層に言及した項では、
フレキシブルプリント配線板の場合、
片面(1層)仕様の配線板であっても積層工程が存在することを述べた。
積層工程に採用される装置はリジットプリント配線板と相違はない。

さて、板厚であるが、
ロール形式で供給されるフレキシブルプリント配線板材料は、
材料単独では、最薄で10μであり、
積層されるカバーレイフィルムも同程度の厚さだ。
塗布される接着剤も同じで
製品となっても、片面配線のフレキシブルプリント配線板であれば
100μに満たない場合も珍しくない。

リジット(硬質)プリント配線板では
0.8mm~1.6mm程度が一般的な板厚であるが、
フレキシブルプリント配線板は 1/10 程度の厚さとなる。

また、ポリイミド樹脂を採用したフレキシブルプリント配線板は

耐熱性能が良好で

ガラスエポキシ樹脂で製造されるリジットプリント配線板の

倍近い耐熱性を有する。

 

フレキシブルプリント配線板とリジットプリント配線板の相違(4)~積層

フレキシブルプリント配線板

リジットプリント配線板には、
工程に大きな相違があることは述べた。

フレキシブルプリント配線板の仕様は一品一様であり、

標準的な仕様が存在しない。

リジットプリント配線板を製造するための設備では

製造することが不可能で

価格も相応にならざるを得ない。

外形寸法

板厚

素材

層数

表面処理

などの一般的な仕様はもちろん、

層構成の策定が必要となることは前回言及した。

それは

リジット( 硬質 )プリント配線板と異なり、

フレキシブルプリント配線板には、

1層( 片面 )の配線板であっても

積層工程が存在するためだ。

フレキシブルプリント配線板の製造工程特有の工程であり

この工程は

リジットプリント配線板では多層板の製造工程でのみ採用される。

フレキシブルプリント配線板の製造工程は

積層工程の存在により長くなる。

また、積層工程において各層のズレを抑制するための

『仮接着』作業が設定されることも工程増加のひとつに挙げられよう。

『仮接着』後の積層工程の存在抜きにしては

フレキシブルプリント配線板の製造工程を語ることはできない。

機会をみて、FR-4、CEM-3をはじめとしたリジットプリント配線板とフレキシブルプリント配線板の工程表の比較データも公開したい。

 

フレキシブルプリント配線板とリジットプリント配線板の相違(3)~層構成

FR-4、CEM-3 などのリジットプリント配線板の材料は、
一般的に定尺サイズで提供される。
日本では、1020×1020(mm)または1020×1220(mm)で提供されることが多い。
プリント配線板メーカー各社では、
これを「ワークサイズ」と称されるサイズに裁断した上で
製造工程に投入することが一般的である。
定尺を裁断すると、一定数値のワークサイズに裁断され、(これを『ボード』と呼称する)
この形状で加工されてゆく。
一方、フレキシブルプリント配線板は、
ロール形式で提供され、ベース材、カバーレイが各々加工された後に、
仮接着で貼り合わされて積層される。
仮接着工程及び積層工程の存在がFR-4、CEM-3 などのリジットプリント配線板と
フレキシブルプリント配線板の大きな相違点のひとつに挙げられる。

FR-4、CEM-3 などのリジットプリント配線板の場合は、
多層板でない限り積層工程は存在しないが、
フレキシブルプリント配線板の場合は
積層工程が独自の加工工程のひとつに挙げられる。
FR-4などのガラス系材料の場合、
エポキシ樹脂は積層工程において接着する特性を備えるが
フレキシブルプリント配線板において採用される樹脂の場合
積層前には、ベース材、カバーレイには接着性はなく、
各層を貼りあわせるために接着剤を使用する。

さらに、補強板を採用する場合にも、
これらを積層または貼り合わせるために積層工程が存在する。
そのため、フレキシブルプリント配線板の設計にあたっては
層構成を予め検討、決定しておく必要がある。

片面配線のフレキシブルプリント配線板を例示した場合、
一般的な層構成は
ベース材層
接着剤層
銅箔層
接着剤層
カバーレイ層
となるであろう。
表面に金めっき(ソフトめっき)
また補強板を採用する場合はさらに層構成は複雑となる。
ベース材
銅箔
カバーレイを積層するためには接着剤を塗布する工程が不可避であり
フレキシブルプリント配線板の場合には、
層構成を明確に規定しないと製造することができない。

フレキシブルプリント配線板とリジット(硬質)プリント配線板の相違(2)~材料

リジットプリント配線板とは
ガラスエポキシ樹脂などをベース基材に採用した
FR-4/CEM-3を中心とした硬質樹脂プリント配線板を指す。

一方、フレキシブルプリント配線板は
可撓性、屈曲性を持ったプリント配線板を指す。
リジットプリント配線板では、

多くのケースでガラスエポキシ樹脂が採用されるが
フレキシブルプリント配線板にはポリイミド樹脂またはポリエステル樹脂
などが採用されることが一般的だ。

 

エポキシ樹脂とポリイミド樹脂は耐熱性に大きな相違がある。

リジットプリント配線板の場合、

ガラスエポキシ樹脂が採用されたFR-4材の耐熱性能には

『Tg』(ガラス転移温度)という指標が採用される。

プリント配線板においては

Tg(ガラス転移温度)とは、

概念上では「材料の特性が変質する境界温度」といえ

ガラスエポキシ材(FR-4)は140℃程度だが、

フレキシブルプリント配線板に採用される

デュポン社製のカプトンには数値の表示がなく

300℃程度までの雰囲気温度には耐えることが可能とされる。

ポリイミド樹脂のデメリットを敢えて挙げるとすれば『吸湿性』だ。

材料が吸湿するとリフロー工程において

吸湿した水分が気化してブローホールの原因となる。

ポリイミド樹脂は、ガラスエポキシ樹脂と単純に比較して

3倍以上の吸湿率を保有するため、

梱包、保管、雰囲気には留意することを推奨する。

材料の特性に大きな相違が存在し

可撓性を意識した回路の設計仕様を網羅する必要性から

ガラスエポキシ基材と同一データを基に

フレキシブルプリント配線板置き換えることは原則的には不可能だ。

また、フレキシブルプリント配線板は
可撓性の特徴のほかに材料の薄さも特徴に挙げられよう。

材料が異なるため特性にも相違がある。
先述した吸湿性に限らず
物性の相違点には留意していただきたい。

リジットプリント配線板は、
1,000mm×1,000mm
または
1,000mm×1,200mm
といった積層板として提供されることから、
製品に加工された後も、
単位面積あたりの価格に換算されることが多い。

しかしながら、
フレキシブルプリント配線板材料は、
*ロール形状で供給されることが多いこと
*材料に大きな相違があること
*工程が細分化されており標準化することが難しいこと
*層構成が標準化されていないこと

などの理由から
単位面積を基本にした価格の算定は不可能といえる。