はんだの濡れ性に ついて(2)

はんだの濡れ性について(2)

鉛フリー実装に移行する際に、部品側の鉛フリー化は必須です。ただ、現在は、鉛フリーはんだ導入への端境期でもあり、鉛フリー未対応のリフロー炉やはんだ槽で実装するケースもあれば、鉛フリー未対応の部品も残っているようです。そのような状況を反映して、以下の質問をよくいただきます。

  1. Sn-Pbはんだで、鉛フリー対応済み部品を実装して問題はないか
  2. 鉛フリーはんだで、有鉛部品を実装して問題はないか

RoHS指令の発効後はどちらもNGですが、過渡的にはどちらのケースも考えられます。

電子部品はかなり鉛フリー化が進み、日本国内の多くのメーカーが鉛フリー、またはRoHS指令対応を謳っています。しかし、部品の鉛フリー化は有鉛品からのランニングチェンジとなる場合がおおいため、未だに一部の有鉛部品が市場に出回っているようです。先日、鉛フリー対応済みの部品にも関わらず、在庫品に有鉛品が紛れ込んでいたため蛍光X線検査で鉛が検出された、などという笑えない話も聞きました。

さて、前出の質問ですが、1.について問題はないと考えますが、2.は信頼性に影響を及ぼす恐れがあります。これまでも折に触れて申し上げてきましたが、はんだが変わって一番重要なことは、「いかに接合信頼性を確保するか」ということです。ところが、部品の端子(リード)に鉛が含まれていると、基板とはんだの界面に融けだした鉛の層ができてしまい、接合面が脆くなってしまいます。リフトオフの項でも述べましたが、基板とはんだの界面に低融点の合金層ができると、その部分の接合強度が著しく低くなってリフトオフなどの不具合を起こします。はんだにビスマスが含まれると、更に低融点の合金層ができて強度を低下させてしまいます。

温度サイクル試験や高温・高湿試験を実施して断面を観察すると、はんだの劣化の傾向が現れます。このため、有鉛部品を鉛フリーはんだで実装することは、避けた方が無難です。フロー実装の場合には、端子(リード)部分の鉛が半田槽に融けだしてはんだの組成にも影響があります。

接合部分の界面では、いろいろなものが接合強度に影響を与えます。ビスマスや、部品の端子部分の鉛、また基板表面の劣化など多くの不具合の因子が隠れています。実装温度の管理に問題があるとカーケンダルボイドの発生を誘発します。また、基板の銅自体が酸化していることもあります。金フラッシュメッキの基板の下地が酸化しているとはんだが濡れているようで濡れていない場合もあります。外観上でははんだが濡れており、不具合が見えないことが恐ろしいところです。

湿気を避け基板の表面の酸化を防ぎ、はんだの品質を管理し、実装に至るまでの埃や異物の混入を避け、実装時の温度プロファイルをしっかり管理することをお勧めします。