はんだの濡れ性に ついて(1)

はんだの濡れ性について(1)

鉛フリーはんだは、従来のSn-Pbはんだに比べて融点が高いことは広く知られています。今まで広く使われていたSn-Pbはんだの融点は183℃ですが、新たに登場した鉛フリーはんだのうち、Sn-Ag-Cu系のはんだの融点は220℃近くまで上昇します。リフロー炉やはんだ槽の設定温度を考えた場合、融点がいかに重要になるか理解していただけると思います。

コンデンサ

鉛フリーはんだを使うと濡れ性が悪くなります。これは、鉛フリーはんだの性質によるもので、止むを得ない部分があります。【写真1】をご覧いただいて分かるのは、Sn-Pbはんだはランド全体に行き渡っていたものの、鉛フリーはんだは濡れ性の悪さから、ランドに「赤目」が見えています。【写真2】も同様です。

ただ、私どもは、これを「不良」と判断するには抵抗を感じます。なぜなら、部品と基板の接合強度に問題がなければ、基板の機能や性能に問題はないのではないかと考えるからです。もちろん、赤目は後々腐食のもとになりますし、無条件で良品と判断することはできないのも事実です。また、基板表面の汚染や、温度管理の問題からはんだが基板表面で球状になってしまっては不良です。「不濡れ」とか「ディウエッティング」などと呼ばれているようです。【写真1】では、赤目よりも「不濡れ」の傾向があり、こちらがむしろ大きな問題です。

コンデンサ

そこで、「機械強度」のデータが意味を持つようになります。これは、基板上に実装された部品と基板の接合強度を数値化したもので、「引っ張り試験」と「せん断試験」が標準的な試験です。試験方法はJIS規格で決められているので参考にしてください。QFPの場合は、フロントフィレットとバックフィレットの形成状態が重要になります。「不濡れ」が発生すれば当然、接合強度が低下します。機会強度の数値データベース化して製造現場で管理すれば、「赤目」と接合強度の因果関係が明らかになります。さらに踏み込んで、最適なランド仕様を絞り込んで、基板の製造仕様に反映させれば、「鉛フリー実装用ライブラリ」の完成です。電子部品メーカー各社では、部品毎に推奨ライブラリを公開していますが、これは、鉛フリー実装でも通用するものではありません。特に、貫通部品では、今までの穴径でははんだが上がらず、穴径を変更することで改善する場合があります。このため、はんだの濡れ性の評価は絶対に必要です。当社では、実際の製品ではできない、この評価をする評価基板を販売していますので、興味をお持ちのお客様はお気軽にお問い合わせをください。

ただ、今回の話はこれで完結ではありません。すべての部品・はんだから鉛が完全に駆逐されていれば話は簡単ですが、問題は少量の鉛が存在する場合です。

次回は、鉛フリー実装において少量の鉛がふくまれるとどうなるのか、記述してみたいと思います。

緊急告知:
RoHS指令の発効まで4ヶ月を残すのみとなりました。今までも何回か、このコラムでも申し上げてきましたが、はんだを変更すると信頼性の評価データが必要になります。この評価データを作成するには少なくとも2ヶ月の日数がかかります。ところが、最近、試験を実施するための設備の空きが少なくなって、お客様からの試験のご依頼に対して遅れが出始めています。現在(2006年2月初旬)でも試験の開始は、2月末になってしまう状態です。6月出荷の製品で鉛フリー実装への対応を完了させようとすると、3月初旬にはスタートしていただきたいと考えています。