基板の製造工程 (11)出荷検査

基板の製造工程(11) (出荷検査)

プリント配線板の品質を向上・維持するためにJISやULなどの規格があり、いくつかの検査方法が標準化されています。しかし判定を全て機械化することは現状では難しく、出荷前の最終検査は結局人の目に頼っているのが現実です。ただ、目視といっても、ほとんどが拡大鏡(倍率3~5倍程度)で対応しており、仕様次第では10倍以上の拡大倍率で検査する場合もあります。

ここで検査する項目は、胴体表面の外観、ミーズリングやボイド、レジストのずれやにじみ、シルク文字のずれやかすれ、Vカットのずれなどで、これらの項目は全数検査となります。これを、基板メーカーの検査員の方々がまさに目を皿のようにして1日中眺めているのです。

私も実は若い頃に手伝ったことがありますが、集中力が持続したのは最初の1時間位程度で切ない思いをしたことを覚えています。しかし人の目とばかにはできません。目視検査にはツボがあるとのことで、熟練した検査員の方は、1枚数秒の検査でほとんどの不良を見つけ出してしまいます。基板工場を見学される機会があれば、是非目視検査の工程をごらんください。特に最近注目されている海外工場では視力3.0はごく普通、視力5.0(!)なんて方々がざらにいるとのことでした。

話が逸れてしまいましたが、他にロットからの抜取検査の項目として、スルホールの断面(メッキのつき具合)、外形寸法、板厚、パターン幅と間隙、穴径、ランド径、反りやねじれなども調べます。これらの項目は機械で検査します。さらに、ユーザーの依頼仕様との照合検査として、材質、層数、品名、レジスト・シルクの色や印刷面(片面か両面か)、枚数などをチェックシートで確認します。

判定基準は、JIS・UL・MILなどによって細かく規定されていますが、一般的にはJISのハンドブックが書店で販売されているのでご参考にされるとよいでしょう。これらの項目には検査機器を使い、基板メーカーでもJIS規格を参考に社内規格を制定しているケースが多いようです。ただ、最近ではJISの規定を逸脱してしまう難易度の高い仕様の基板も増えてきており、JIS規格だけでは対応しきれなくなってきています。

コストダウンのツボ

検査項目でもお話した通り、出荷検査の工程では信頼性を確保するためにいろいろな検査が実施されます。検査をパスすることは重要なことです。しかし、検査を厳しくするということは、同時にコストが上がることを意味します。

今回は、個別規格の妥当性について少しお話をしたいと思います。ただ、内容はあくまで作者である私の体験談からであるため、お客様の事情にそぐわない場合もあるかもしれませんがその辺はご容赦ください。

前の項で、基板メーカーはJIS規格を社内規格に取り入れている場合が多いと申し上げました。しかし、JIS規格では、外形寸法や穴径・パターン(ライン/スペース)などは「個別規格で規定する」と表記されているため、お客様に決めて頂くケースが多くなっています。しかし、お客様に個別規格の決定を押し付けて良いのでしょうか?

他にも例を挙げると、ソルダレジストの欠陥の項目では「実用上有害なかすれ、剥がれ、ピンホール、及び異物の混入があってはならない」とある一方、「導体間にまたがる気泡の混入はあってはならない」とも表記されています。それでは、導体間の気泡が原因でレジストインクが剥がれた場合、これを実用上で有害か否かの判断をお客様に押し付けても良いのでしょうか?

もちろん、既にお客様に側に判断基準がある場合、それに従うことは当然のことかも知れません。一般より厳しい規格を売り物に商品を販売するケースもあると思います。しかし、すべての規格を厳密に適用した場合、それが費用に跳ね返ることも事実です。極端に「見た目」にこだわれば小さなピンホールや些細なズレも不良と判定される場合があり得ます。開発担当の方が良品と判断しても品質管理担当の方から見れば不良と映るものもあるでしょう?

難易度が高い商品はおのずから発注先も限られてしまいます。さらに、そこに納期や価格の話が出てくると資材担当の方の判断も加わり、品質や納期のせめぎあいで価格低減も難しくなってしまいます。

私たちは開発段階から参加させて頂くことで、適正な仕様を提案してお客様のオーバースペックを少しでも減らし仕様を標準品に近づけることで無駄なコストアップを排除できるよう提案させて頂きたいと考えています。