基板の製造工程 (2)メッキ

基板の製造工程(2) (メッキ)

ドリルの工程が終了すると、基板に穴が一杯あいた状態になっています。しかし、穴はあいていても内壁は樹脂が露出していて表裏は導通していません。メッキ工程は表裏を電気的に接続させる作業です。基板全面にメッキを施すため、このメッキ工程をパネルメッキと呼ぶこともあります。

ただ、多層板の場合、いきなりメッキ作業に取り掛かることはできません。

スミア

右の図をご覧ください。ドリルが終わった穴の内壁には、ドリル加工で融けた樹脂が残っている場合があります。これを「スミア」と呼びますが、このままメッキをすると内層銅箔と導通せず断線と同じ状態になってしまいます。

そのため、多層板ではスミアを除去してからメッキに取り掛かります。この作業は「デスミア」と言います。デスミアが済むと、内壁を洗浄して触媒を付加した後に化学銅メッキを施します。化学メッキは均一に付きますが、厚くつかないので続けて電気メッキで銅を厚くつけます。メッキの厚さをより均一にするため、化学(無電解)メッキのみで対応するメーカーもあるようですが、その方法ですと工程の時間がかかります。

スルホールのメッキ厚は、回路によって流れる電流の値が異なるため保証値の判断はつきませんが、平均では20μ前後はあるので1A程度までは信頼性には問題はないと思われます。数10Aクラスの回路での銅の厚さについては大電流基板の項目で説明します。

以前はメッキの析出のほか、ドリルの加工精度の悪さやメッキ後の工程の問題から、スルホールの断線が発生することがありましたが、最近では発生頻度はぐっと少なくなりました。なお、はんだスルホール基板はほとんど無くなっています。

コストダウンのツボ

プリント基板のメッキの技術もかなり確立され、スルホール断線も最近は少なくなったことは説明した通りです。ところで、今回のコストダウンのつぼは、このスルホール断線の対策についてお話したいと思います。

まず断線が起こる原因についてお話します。スルホール断線(以下TH断線とします)の原因は、内壁にメッキの析出が不十分である場合と、メッキ工程の後に「溶け落ちて」しまう場合の二通りがあります。

前者の問題その1はドリルの加工精度の問題です。ドリルのビットが傷んだり、回転数や送りスピードに問題があると穴の内壁が均一に加工されず、メッキを内壁全体に付けられないために表裏の導通が不十分になります。

その2は、メッキ工程の管理の問題です。メッキ液は定期的にしっかり交換しているか、製品の品質は定期的にチェックされているか、加工中のトラブルは無いか、メーカーごとに管理項目が決められているので、発注先の基板メーカーに確認してみればよいと思います。

後者の問題その1は、パターン形成(露光)工程の問題です。露光作業のときにフィルムがずれてしまうと、エッチング工程で穴の中に侵入したエッチング液がメッキを溶かしてTH断線を起こすことがあります。この不良はレジスト作業前や、出荷前の検査でほとんど発見されているようです。

その2はレジストインクによる問題です。レジストインクをスクリーン印刷によって塗布する場合、インクが穴を塞ぐことがあります。後に表面を洗うための工程で酸を使っていると、インクが塞いだ穴に残った洗浄液が時間をかけてメッキを溶かしてTH断線を引き起こすことがあります。この不良モードの厄介なところは、製造工程の電気検査の段階では検知できず、経時変化とともに断線するところです。このため、残渣の出やすい小径穴では、最初からランドの銅を露出させずにレジストインクで覆う方法が取られる一方、レジストインクを薄く均一につけるために「スプレーコート」「カーテンコート」などの方法を採用する基板メーカーもあります。

今回は、コスト低減というより品質管理の話になってしまいました。しかし、TH断線はロット全体に波及する恐れがあるため、発生した場合の被害は計り知れません。そうならないためにも、メーカーを決定されるときに少しでもお役に立てればと考えております。私たちは仕様や技術的なファクターはもとより、品質の管理全般に至るまでお客様のお手伝いをさせていただくことができる会社であると自負しております。