基板の取り数

基板の取り数について

基板の調達に一度でも関わった方なら、1㎡あたりの取り数には気をお配りのことと思います。

しかし、同じ外形寸法の基板でも、メーカーごとに取り数が異なる場合があります。それは何故でしょうか?今回は、取り数計算のメカニズムをお話しようと思います。

『基板』メーカーは、『基材』メーカーより材料(銅張積層板)を購入します。銅張積層板の大きさはメーカーに限らず統一されており、そのサイズは

(A) 1020 × 1020 [mm]
(B) 1220 × 1020 [mm]

のいずれかになっています。

『基板』メーカーはこの材料を自社のラインで製造するために一定の大きさに切断しますが、これを、ワークサイズ(W/S)と呼びます。

W/Sの寸法例を以下に示します。

<W/Sの寸法例>
材料寸法 4分割 6分割 8分割 9分割 12分割
1020×1020 510×510 510×340 510×255 340×340 ——-
1220×1020 610×510 406×510 305×510 406×340 305×340

基板の面付け

W/Sの単位は、通常「ボード」と呼ばれますが、基板メーカーはこのボードの大きさでラインに投入します。

材料(銅張積層板)をW/S(ボード)に分割してラインに投入するときには、上記の図の通り、ボードに基板が面付けされます。面付けする際に製品同士は少し離れて配置されますが、これは、後で切り離すときの「加工しろ」が必要になるためです。この加工の方法については、後日、工程の説明の際にお話します。

ところがここからが問題で、基板メーカー各社では、まず、W/Sのラインアップが違います。例えば、A社では、510×510のサイズは加工できるが、B社では加工できない、といった具合です。

次にX1/X2・Y1/Y2の寸法がメーカーによって異なります。X1とY1は、メッキ加工する際にラックにかかってメッキ液が付かないため「めっきしろ」と呼ばれ、X2とY2は、外形加工のときの「加工しろ」です。「めっきしろ」と「加工しろ」は、メーカーの加工方法や製造機械によって寸法が変化しますから、W/S同様にA社では対応できるが、B社では対応できないということになるのです。

以上のお話でお分かりになったと思いますが、基板の取り数は、基板外形の他に、W/Sと「めっきしろ」「加工しろ」の寸法によって決まりますので、どこのメーカーも同じではありません。そのため、基板の外形寸法を決める際には、メーカーの取り数を確認する必要があります。

開発担当の方々にはやれやれのお話ですが、話はこれで終わりではありません。今度は納期との兼ね合いです。W/Sが豊富であれば今度はラインの管理が大変です。また、外形加工に金型ではなくNCを使うと加工しろを狭くすることができません。

試作専門のメーカーでは、短納期対応の必要性から、ラインの切り替え頻度を少なくするためにW/Sの種類を意図的に抑える傾向があります。中には、ワークサイズを1種類に絞ってしまうメーカーもあるほどです。更に、試作品は発注数量も少ないため、わざわざ大きなW/Sに面付けせずに製造するケースが多いのです。つまり、取り数の論理は無視するためどうしても価格が高くなりがちです。

一方で、最近では、量産メーカーでも4層板を4日以内で製造することも珍しくないため、試作品と量産品の価格差を縮める圧力があることも事実です。

そのため、あくまで一般論ではありますが、短納期対応が必要な試作品と量産品の価格については切り離して考えていただくことをお勧めします。

安かろう悪かろうでは生き残ることはできません。基板メーカー各社は、海外や同業との競争の中で、いつでも安く早く良い製品を送り出す努力をしているのです。

 

コストダウンのツボ

よく、基板メーカーにお見積を依頼される時に、メーカーの営業から「ここの寸法をあと何mm小さくできませんか?」と申し出があると思いますが、これは、基板の取り数の効率を高めることで製品単価が大きく変動するためです。W/Sに4枚面付けされている基板を6枚面付けできれば、単純計算では33%単価が下がります。(実際とは異なります)問題は、前項でご説明した通り、取り数がメーカーによって異なるところです。基板メーカーの立場では取り数の側面しか見えません。しかしお客様の立場では、実装ラインの制限や筐体との兼ね合いから、基板寸法を最適化しずらいのではないでしょうか?

私たちは、部品決定の段階から仕様を検討することで、外形寸法はもちろん、よりコストパフォーマンスの高い製品を提供できると考えております。