鉛フリーはんだの 種類

鉛フリーはんだの種類

鉛フリー実装に対応する場合には、当然、どのはんだを選定するかは最初にお考えになることでしょう。

鉛の存在が問題なので、鉛を使わなければ良いのですが、従来の錫(Sn)-鉛(Pb)はんだは、資源として豊富で、融点が低く加工が容易な上に軟らかいことから基板との接合後に応力がかかってもそれを分散するというスグレモノでした。環境問題への影響さえなければ、先人の知恵には脱帽するしかありません。

まずは、Sn-Pbに置き換わる資格を持つために求められる特性をまとめてみました。

  1. 環境にやさしいこと
  2. 基板と部品の接合強度を十分に保つことができるもの
  3. 電気的な特性に優れるもの
  4. 低コストで継続的に安定供給が可能なもの
  5. 工程管理が容易なもの(融点・経時変化など)
  6. 高密度配線の基板に使えるもの

加えて

  1. 従来設備が使える
  2. 部品の耐熱特性を満足するもの

などがクリアできれば文句はありませんが、この2項目はなかなか難しいようです。

そんな錫-鉛はんだに代わるものを見つけることが難しく、今はいくつかのはんだが代替品として提案されています。

大きく分けてみると

  1. 高温系
  2. 中温系
  3. 低温系

の3種類に分類されます。

それぞれのはんだを少し細かく説明すると、高温系のはんだには、錫(Sn)- 銅(Cu)や錫(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)などが挙げられます。Sn-Cuはもっとも融点が高く、部品に直接熱ストレスが加わらないフローはんだの実装用に使われています。Sn-0.7Cuで融点が230℃近くになるものの、濡れ性も良好でコストもSn-Pbはんだとあまり変わりません。

しかし、このはんだには、「はんだ食われ」のリスクがあります。これは、はんだ槽内側の金属が液状のはんだに溶け出す現象のことです。「溶食現象」と呼ばれ、固体金属が液体金属に溶け出す作用を指し、その速度は液体金属の温度とSnの濃度にも比例します。従来の、sus304 の槽では、ひどい場合には、1ヶ月も持たずにはんだ槽の内部に穴があいてしまうこともあるそうです。そのため、sus304 をsus316 に変更したり、sus316+窒化処理を施した槽に変更したりお金がかかります。

次に、Sn-Ag-Cu は、Sn-Cuより若干融点が低く、何よりも、JEITAの推奨はんだになっていることもあり、最近ではもっとも一般的に使用されています。融点は220℃強で、当社が鉛フリーはんだでの実装を承る場合には、ほとんどがこのはんだを指定されています。機械的な強度が大きくクリープ変形もあまりありません。耐熱特性にも優れており、熱ストレスにも強い特長があります。コストが高いデメリットはあるにしても、有望な代替品のひとつです。ただし、これもまだ業界標準という訳ではなく、海外では銀の含有量の多いものも研究されているようです。

中温系のはんだには、Sn-Zn(亜鉛)系が挙げられます。Sn-9Znの融点は199℃でSn-Pb系のはんだに近く、機械的強度に優れ、クリープ変形も少ない上に資源の制約もありません。しかし、このはんだのデメリットは、Znが酸化しやすいため、はんだペーストの経時変化が大きく、はんだの濡れ性も悪くなります。つまり、リフロー時の温度プロファイルの管理がむずかしくなります。

最後に低温系のはんだは、Sn-Bi(ビスマス)系のはんだが挙げられます。これは、前出のはんだの濡れ性を向上させることを主眼に使われたはんだです。Sn -58Biは、融点が138℃と低く濡れ性がよいため、パソコンなどに使われていましたが、硬くて脆い上に部品の端子に鉛が存在すると、Sn-Bi-Pbの合金を形成して、リフトオフを引き起こす要因にもなります。