基板を安く買う(2) プリント配線板編[1]

基板を安く買う(2) プリント配線板編[1]

私が創業した2004年から、本稿で「コストダウンのつぼ」という形で文末に掲載してきましたが、結構好評である反面、最近ではまとめて掲載して欲しいというご要望をいただくことが増えてきました。端的に申し上げて「ノウハウ本」というには不十分ではありますが、前回の設計編に続いて今回からは基板の仕様について述べてゆきたいと思います。

「プリント配線板だけ」のコストを下げることは簡単ではありませんが、基本的には、実装された「プリント回路板」としての費用抑制の知識について筆者が知りうる内容を極力簡単に述べてゆきたいと思います。

  1. 外形寸法(シート面付け)
    ワークサイズにいかに効率よく製品を配置するかが重要になります。そこで、ワークサイズのラインアップに加えて「めっきしろ」と「加工しろ」の数値を確認した上で基板の外形寸法を決めることが重要です(詳細は「基板の取り数」の項参照)。従って、機構設計の段階でプリント配線板の外形寸法も検討対象に加えていただくことをお勧めします。
    また、1機種あたり複数のプリント配線板を使用する場合、可能な限り1枚のシートに面付けしてください。例え4層板と両面板であっても1シートに集約した場合、コストパフォーマンスが向上する場合もあります。また、複数のプリント配線板を1つのシートに面付けする場合も検討が必要です。プリント配線板の取り数は、シートに面付けした場合の最大外形寸法に依拠しますので、必ずしも個別の基板を無理やり小型化する必要はありません。
    例えば、A、B、2種類の基板をシート面付けする場合、A:90×80 B:85×75とするより、1辺のいずれかの数値を合わせてA:90×80 B:90×75または85×80としたほうが、1枚のシートに面付けしやすくなります。このあたりの詳細は、お付き合いのプリント基板メーカーに問い合わせしてみるとよいでしょう。ただし、その際、部品の配置による実装機の流し方向も検討しておく必要があります。
  2. 材料
    材料の標準化も重要なテーマです。最近はあまり耳にしなくなったものの、材料費が安いという理由でCEM-3(ガラスコンポジット材)を選択される例を目にしたことがありますが、あまり意味はありません。耐トラッキング性能を考えて選定した場合を除いては、FR-4(ガラスエポキシ材)で統一することをお勧めします。
  3. 層数
    申し上げるまでもなく層数は少ないに越したことはありません。納期との関連もありますが、意に反して引き回しのスペースに窮したような場合には極力時間をかけることが第一です。特にBGAパッケージが実装される基板では、BGAのパッドからの引き出し次第で層数が決定されてしまいます。
  4. 表面処理
    基本的には、「プリフラックス処理」で統一することをお勧めします。ただ、プリフラックス処理の場合、プリント配線板メーカーが長期保存の品質劣化を理由に3ヶ月程度しか品質を保証してくれません。
    一方、その都度購入しようとすると、今度は小口品の受注を渋り、「まとめ発注」を依頼してきます。そこで、長い間保管することになる場合は一般論として「レベラ処理」をお勧めしたいと思います。
    以前の本稿コラムで、金フラッシュめっきをお勧めしたことがありますが、下地の劣化が実装品質に影響を及ぼす事例が報告されており、鉛フリー実装を採用した場合には接合強度が著しく低くなることがわかっています。金めっきの下地の品質(銅箔やニッケルめっき部分)が安定していれば問題はありませんが、特に海外で生産しているようなプリント配線板は、工程と品質の継続的なフォローが不可欠です。ただ、ライン/スペースが100μ/100μ以下のような高密度のプリント配線板では、表面の平滑性や「ウィスカ」への対応の必要性から金めっきを採用せざるを得ないかもしれません。

次回は、も引き続き基板の個別仕様に関するコストダウンの方策について述べてみたいと思います。