基板の製造工程 (10)導通信頼性の検査

基板の製造工程(10) (導通信頼性の検査)

プリント配線板は、主に銅をエッチングしてパターンを形成します。そのため、パターン形成に関わる工程で問題が発生すると断線やショートなどの不良につながります。基板メーカーでは、作りこみ段階での品質向上(一次不良率の抑制)と不良品の流出防止の両面から品質の向上に努めています。

最近のプリント配線板はパターンの高密度化により、目視での不良品の発見が非常に難しくなったこともあり、パターン検査も自動化されてきています。今回は、パターン検査の方法についてお話したいと思います。

  1. AOI(Automatic Optical Inspection )検査
    基板を工学的に検査する方法です。サンプル基板と被検査品の不一致部分を検出する一方、デザインルールを逸脱した部分を抽出して良否を判定します。
    ショート・断線・回路の突起・細り・銅残りにピンホールなど、回路上の欠陥はほとんど検出が可能ですが、電気的な導通保証はできないことと、スルホール内部の検査ができません。
    そこで、チェッカー治具と併用することで高い検査能力を発揮することができることになりますが、検査の時間がかかるためあまり現実的ではありません。実際は内層回路のエッチング後とフィルム完成後の検査に使われることが多いようです。
    Automated Optical Inspection とも呼ばれます。
  2. フライングチェッカー
    1本のピンですべてのネットのキャパシタを検査して良否を判定する方法と、2本のピンでネットの始点と終点の導通を抵抗値から判定する2通りの方法があります。
    基板の検査は基本的にパターンのショートと断線を検査するもので、耐熱性や機構的強度・メッキの厚さなどを判定するには別の試験を実施する必要があります。高度な検査は全数検査が難しいため、通常は電気検査によって良否を判定しています。
    機械の価格が高いため保有している基板メーカーは少ないものの、特に多層板の検査に使用される頻度が増えています。専用チェッカーと同等の検出能力ながら検査費用だけで済み、専用チェッカーを作成できない試作品や小口品の検査でメリットを発揮します。数本のプローブが移動しながらチェックポイントの導通を検査するため、データ作成と検査自体に時間がかかりますが、最近は検査スピードが速い機種も登場しています。
  3. 専用チェッカー
    基板のランドにピンを接触させて電流を流し、その部分の抵抗値からパターンの良否を判定します。一品一様の治具であるためデータ作成の手間が少なく、数秒で検査が完了します。検査では、まず一定の電圧をかけて抵抗値が判定基準を下回ればショート、次にパターン上の抵抗値が判定基準を上回れば断線、というように判定します。このとき、印加する電圧が高いほど精度も高くなります。
    専用チェッカーは、1台の価格が10万円程度から高いものになると100万円を超えるものも以上あるためもっぱら量産製品の導通検査に使用されます。リピート性の高い基板では治具組立の工数がかからない専用チェッカーが有利ですが、回路変更に伴いピンの位置がずれると再利用できないケースが多く再製作となりますのでご注意ください。
  4. ユニバーサルチェッカー
    アクリル板に一定ピッチ(2.54mm・1.27mm)で格子状に穴をあけ、そこにピンを差し込んで基板に接触させて判定する方法です。フライングチェッカーが登場する前は廉価版の検査機として使われていましたが、ピッチが一定でSOPやQFP・BGAなどの半導体パッケージ部分の検査ができず、パターン一部しか検査が行き届かない上に、虚報(OKパターンもNGと判定してしまう)が多く、検査時間も専用チェッカーに比べて長いため最近は減少の傾向にあります。

コストダウンのツボ

「安くて」「良い」ものを。買う立場の方々にしてみれば当たり前のこと。しかし、「不良」のリスクから完全に逃れることが難しいのも事実です。せっかく一生懸命探し回って見つけたメーカーに発注したら不良品が混入していた・・・。こんな経験したくもありませんが、まったく無縁の方も珍しいのではないでしょうか?

一方、基板メーカーの立場から申し上げると、回路の高密度化で目視検査の検出能力の限界もあり、導通信頼性の保証は頭の痛いところです。

しかし、チェッカー治具は本当に必ず必要なのでしょうか? 現状、パターンの設計・基板製造・実装の各工程がバラバラになっているため、個々の工程で品質を保証しようとするとオーバースペックとなる可能性があります。要するに、基板製造にあたって歩留まりが良好な仕様、ご要求に合致した最適な仕様を達成するためには、設計の段階からのお打合せが必要になるということです。

よく、設計から実装、部品調達まで含めて全て段取りしてから発注されておられるお客様がいらっしゃいます。確かにある程度のご指示は必要にはなりますが、指示内容には忠実であってもそれだけで終わっていませんか?

私たちは、ご依頼の製品が最適な仕様であるかを必ず検討し、必要がなければチェッカーなしであっても品質を保証することは不可能ではないと考えます。設計の開始前に是非ご相談ください。お客様の不要な費用削減に全力でご協力致します。