基板の製造工程 (9)外形加工II

基板の製造工程(9) (外形加工II)

今回取り上げるのは、ミシン目・Vカット・面取りの工程です。

前回は、基板の外形加工のうち金型加工とルーター加工についてお話しました。この2つの工程は基板製造の上で必須ですが、今回取り上げる加工方法は一種のオプション工程です。

しかし、基板を複数面付けして実装効率を向上させたり、単位面積当たりの取り数を増やすには有効な方法で、実際は非常に多くのケースで使用されています。

ミシン目

まずミシン目とは、基板同士の間の一部分にドリルで連続的に穴をあけてスリットを入れるやり方です。穴はドリル、スリットはルーターで加工します。(図1)

加工の精度はありますが、基板を分割したときにミシン目のバリが残るのが難点です。そのため、個別基板に切り離した後、筐体とのぶつかりに注意して外形を決める必要があります。

ちなみに、スリットの幅は1~2mmのものが最も多く、ミシン目の穴の大きさは材質や板厚によって様々です。穴の大きさやピッチ、穴を明ける位置などを工夫すれば端面のバリを抑制することは可能です。

スリット

次に、Vカットは、金型・ルーター加工後に専用のマシンで溝を入れる工程です。溝の深さは基板の材質によって変わりますが、溝の深さは紙系の材料では浅め、ガラス系の材料では深めに設定します。また、基板端面からの距離によっても深さの設定は変わります。ジャンピングVカットを使えば不連続の加工もできます。

なお、板厚が薄い基板ではご注意ください。薄い板厚のものでは反りの原因になる場合があります。

ところで、スリットとVカットはよく同時に使用されることがあります。Vカットとスリットを組み合わせる場合には、図2のようにスリットを捨て板に食い込むように配置することをお勧めします。これは、加工時の金型・ルータービット・Vカットの加工ズレに対処するもので、現実に加工ズレが発生しても基板の損害を最小限にするためのものです。Sの寸法は0.5~1mm程度にするとよいでしょう。スリットのコーナーはR(1mm)をつけておけば、金型・ルーターいずれにも対応できます。

面取り

面取りとは、図3のように端子をコネクタに差し込む部分の角を削る作業のことを指します。

端子には金メッキをよく使いますが、端子の部分の金メッキは基板とコネクタの抜き差しでメッキが剥れないよう電気メッキでつけるため、メッキ用のリード線が必要です。しかし、外形加工の後にリード線をそのままにしておくと、コネクタとの抜き差しの時に接合部分がめくれ上がったりして不具合が発生します。

そこで、基板端面のリード線をそぎ落としてコネクタとの接合不良を防止する役割もあります。もっとも、端子があれば必ず必要になる訳ではありません。

コストダウンのツボ

前回ご紹介した二つの工程は基板製作の上で必須の作業ですが、今回は外形加工でもオプションとなるものです。ただ、前の項でもお話したとおり、単体の寸法が小さいもの、またコスト低減の方策としても不可欠であるためオプションという認識は薄くなっています。

今回は、特にVカットのお話を取り上げます。前の項でも申し上げた通り、基板同士の接合部にVカットを入れる方法は今や当たり前となっています。ただ、Vカットを使う場合にはいくつかの注意するべき点があります。

あくまで私の経験からのお話ですが、まず本数を多く入れないことです。基板単体の大きさが非常に小さいケースなどの例外はありますが、使いすぎると反りや歪みの原因になります。また、当然費用にも影響します。Vカットの加工機は平行に2本同時に加工するものが多く、5本や10本使うと何度もマシンで加工を繰り返すため、Vカット同士のズレを起こすリスクもあります。

2番目に、基板同士の接合部分には使わない方が得策です。金型やルーターに比べてズレが大きいためです。ちなみに、基板メーカーではVカットずれの規格を 0.2mm に設定しているところが多く、Vカットずれが起きると2枚の基板が同時に不良品になってしまう恐れもあります。基板同士の接合には、ズレの少ないミシン目とスリットを併用することをお勧めします。実装の都合などでどうしても必要になる場合は、基板同士の間に捨板をつける方法もありますが、これもあまりお勧めできません。

3番目には、できるだけ基板の中心を通したり十字に使わないことです。実装時の熱ストレスにより反りやねじれを起こすことがあります。

このように、Vカットは基板を面付けする便利な方法である反面、費用が増加したり反りの発生の原因になったりします。

私たちは、単にコストを下げるだけでなく、いつも最高のコストパフォーマンスを提供できるよう努力しています。特に外形寸法や仕様を決定した後では基板のコストダウンの選択肢がぐっと減ってしまいます。お悩みは仕様決定の前にお気軽にご相談ください。