基板の製造工程 (3)焼付け

基板の製造工程(3) (焼付け)

前回までの工程で、内層パターン入りの基板に穴をあけてメッキを施すところまで漕ぎつけました。ただ、穴径が小さいこともあって遠目に見るとまだただの銅の板です。基板のパターンを焼き付けた段階あたりから基板らしくなってくると私などは考えています。

ただ、パターン形成の方法にもいくつかの分類があります。以下にその方法別に内容を説明します。

  1. フィルムによる焼付け(写真法)
    基板にフィルムを貼りつけて感光させてパターンを形成します。銅箔厚18μmの一般的な基材では、ライン/スペース(以下L/S)100μm/100μm程度までのパターン形成が可能です。但し、ビルドアップ工法で生産される携帯電話やデジカメなどに使われる基板では、銅箔厚10μm未満の材料を使って L/S:75μm/75μm の微細パターンを形成できるメーカーも登場しています。
    なお、この形成法は「テンティング法」と「はんだ剥離法」に分けられます。現状は前者が主流ですが、フィルムとしては「ポジ」と「ネガ」になります。具体的には、前者はパターンやランドになる部分にフィルムを残してフィルムをエッチングレジストとしますが、後者はパターンやランドになる部分以外にフィルムを残して必要な部分は後からはんだをメッキしてエッチングレジストとします。後者の工程は長くなりますが、ランドがずれて露光されても穴の中にエッチング液が入らないため、TH断線を起こさないメリットがあります。
  2. インクによる印刷(印刷法)
    インクでパターンを印刷する方法です。「基板の製造工法」でも説明しましたが、量産性が高くローコストが求められる基板に採用されます。ちなみに銀スルホール基板の製造工法もほとんどが印刷法です。L/S は 200μm/200μm 程度が一般的ですが、写真法に比べてパターンの端面がシャープではなく、パターン幅や間隙値を細かく規定することは難しい工法です。
  3. 光学的な直接描画
    最近増えてきた方法です。フィルムが不要なるため、イニシャル費用がかからないメリットを生かして小口品の製造に使われ始めました。今までは光源の焦点の大きさから細線パターンの形成はできませんでしたが、最近では焦点の小さい光源の開発が進んできています。試作品やローエンド仕様の小口リピート品用に伸びると思われますが、基板メーカーの導入がどの程度進むかが鍵になりそうです。
  4. アディティブ法
    (1)から(3)とは全く異なり、樹脂面の上の必要な部分にのみ化学メッキの方法でパターンを析出させる工法です。電気メッキを使わないためパターンの厚さを均一にすることができる一方、メッキ工程に時間がかかり設備費用などのコストもサブトラクティブと比べてかなり高く、この工法を採用しているメーカーはわずかです。

上記がパターン形成の一般的な方法ですが、この工程には他の工程と決定的に違う特徴があります。それは、この工程ではチリや繊維ごみなどを非常に嫌うことです。

フィルムと基板の間に繊維が付着し、そのままエッチングの工程に流れるとパターンの突起や欠けが発生します。著しい場合にはパターンショートや断線へとつながります。こうなった基板は、当然二度と使いものになりません。このため、この工程は半導体と同様にクリーンルームでの作業となり、作業者は入室前にごみを落としてから作業にかかるよう工夫されています。

また、ひとつ付け加えるとフィルムにごみが付着するともっと怖いことにロット全体が不良品になってしまいます。そのため、フィルムの作成の段階でもごみの付着には気を遣い、工程で使う前のフィルムもチェックされています。

コストダウンのツボ

基板の実装密度や配線密度が上がると、基板の面積に占める穴+ランドの割合が頭の痛い部分になると思います。貫通穴の数が増えると内層の信号線のスペースが削られるだけでなく、電源やGNDのスペースにも影響します。そのような時、基板のランド径の寸法はいかがでしょうか?

穴に対するランドの残り幅を「アニュアリング」と呼びますが、この幅はメーカーによってばらつきがあります。ただ、もしランド径を小さくできれば、ピンの間にパターンが1本余計に配線できるかもしれません。特に最近のようにBGAやCSPといったパッケージを使用した場合、ピンの間に配線ができないばかりに層数を追加するような憂き目にも会いかねません。ビルドアップ基板を採用、なんてことになったらコストが跳ね上がってしまいます。(物理的に配線ができない場合は仕方ありませんが・・・)一方、設計し直すとかなりのイニシャル費用もかかります。

設計から基板、実装まで一貫して提案できる当社なら、最適な仕様を提案して余分なコストをカット、納期の短縮にも貢献します。是非、仕様の検討からご依頼ください。