基板材料

基板材料について

皆さんは、基板の材料をどのように決めておられますか?

基板の材料は、通称【銅張積層板】と呼ばれます。この呼称は折につけて登場しますのでご記憶ください。

皆さんの馴染みの深い材料といえば、やはりガラス系の基材になりますが、ガラス基材でも細かく分類することができます。分類に関しては、いくつかの規格に沿った取り決めがありますが、今回は、最もよく使われる アメリカの規格(ANSI・NEMA)の呼称に基づいて説明してゆきます。

説明については、<別表・材料と規格名称>を参考にしてください。

  1. 紙フェノール基板(FR-1,2)
    主に片面基板に使用されます。材料のなかでも、最も古くから使われて、白物家電や、ハイビジョン前のTVや据置型VTR、ステレオ、ラジカセ、家庭用電話機、ゲーム機、キーボード、電子部品など、広い範囲で使われています。
    通常、メッキによるスルホールは形成できませんが、銀ペーストを穴に充填してスルホールを形成する銀スルホール基板に使われており、ゲーム機やTVやエアコンのリモコン、オーディオなどに使用されています。
  2. 紙エポキシ基板(FR-3)
    紙フェノール基板と同様に片面板で使用されますが、耐アーク性・耐トラッキング性、耐湿性に優れるため、高電圧回路や耐湿性を要求される回路に使われることが多いようです。
  3. ガラスコンポジット基板(CEM-3)
    ガラス繊維を切り揃えたマット状のものに、エポキシ樹脂を滲みこませたものです。特に耐トラッキング性に優れ、ガラスエポキシよりも安価であるため、片面板では対応できない家電品やAV機器関係、アミューズメントから一部の産業機器まで、両面板の広い範囲で使用されています。
  4. ガラスエポキシ基板(FR-4)
    ガラス繊維を布状に編んだガラス織布にエポキシ樹脂を滲みこませたもので、多層板のほとんどがこの特性の基板です。最も一般的で汎用性の高い材料です。ICカードやデジカメなどの薄物(0.2~0.4mm厚)からマザーボード(2.0~2.4mm厚)まで幅広い分野で使用されており、様々な銅箔厚の材料も販売されています。
  5. ガラスポリイミド基板(規格表記なし)
    もともと、アメリカの航空宇宙関係の高難燃性材料用として開発されました。はんだの温度はもちろん、400℃前後の使用にも耐える上、難燃性を有しています。 硬質板としても使用できますが、現在は主にフレキシブル基板に使用されています。
  6. フッ素基板(規格表記なし)
    通称「テフロン」として知られますが、不燃性で特に誘電特性が最高クラスであるため、高周波特性を求められる回路に使用されます。但し、材料費が高く、スルホールメッキに特殊な薬品を使うなど、基板の使用領域はあまり広くありません。
  7. ガラスPPO基板(規格表記なし)
    フッ素樹脂に次ぐ高周波特性を有し、加工もフッ素樹脂より容易です。基材の耐熱性を示すTg(ガラス転移点)も210℃程度と高くなっていますが、フッ素樹脂と同様、汎用性が低く、量産品に使用するには慎重な評価が必要です。
  8. 金属基板(規格表記なし)
    主にアルミニウムの上に絶縁層を施し、更にその上に銅による配線を形成したものです。熱伝導率が高く、電源基板やパワー部品搭載基板、大型モータの制御回路、LED搭載基板など高い放熱特性を求められる分野で使用されています。
  9. セラミック基板
    アルミニウムより放熱特性が大きく、テフロンより高周波損失が低く抑えられるため、パワーICの分野でよく使われますが、他の基板と製造方法がまったく異なり一般の基板メーカーでは製造することができず、一部メーカーで製造されています。

<別表・材料と規格名称>
基材 ANSI・NEMA規格 JIS規格
紙+フェノール樹脂 FR-1(XPC)
FR-2
PP
紙+エポキシ樹脂 FR-3 PE
紙+ガラス布+エポキシ樹脂 CEM-1 CPE
ガラス不織布+エポキシ樹脂 CEM-3 CGE
ガラス織布+エポキシ樹脂 FR-4
FR-5
GE
ガラス繊維+ポリイミド樹脂 —– GI
ANSI :アメリカ規格協会規格(American National Standard Institute ,Inc.)
NEMA :アメリカ電機工業規格(National Electrical Manufactures Association)

 

コストダウンのツボ

プリント配線板の用途は、最近とみに拡がってきました。よりグレードの高い電子部品の登場により、今までは基板を使えなかった分野でも、プリント基板を使って回路をモジュール化して、コストダウンを図れる場合があります。また、従来は不可能だった大電流を基板に流すことができるようになったり、部品を基板の回路の中に埋め込んでしまったり。

材料を選定される前に、是非ご相談ください。私たちは、基板のプロフェッショナルとして、いろいろな局面でお役に立ちたいと考えております。

また、話は変わりますが、基材を選定されるとき、FR-4 を CEM-3 に置き換えることでコストダウンを図ろうとされるお客様がおられます。確かに材料のグレードは落ちますが、価格低減効果はあまり大きくありません。

FR-5相当品やポリイミド系など、高価な材料をFR-4に置き換えればコストダウンを図ることは可能ですが、材料を選定される時には、より汎用性の高い材料をお使いください。最初から高価な材料を使ってしまうと、あとで材料のグレードを落とそうとすると、特性評価の試験がやり直しになってしまいます。初めの材料で期待した特性が得られないときに、初めて材料をよりグレードの高いものに置き換えることを考えてみてはいかがでしょうか?但し、開発期間の都合などで、「そんな悠長なことは言っていられない」お客様もおられることでしょう。そんな時は、材料選定のご相談もお聞きしますので、お気軽にご相談ください。